Scribble at 2026-07-12 09:16:23 Last modified: 2026-08-04 19:00:34
岡野原大輔氏の『ヒトとAI』(岩波新書 新赤版 2122)が7月の下旬に出版される予定だ。目次を眺めると、かなり総覧的に事項や話題が配置されているものの、総ページ数は新書の標準的な200ページていどであるから、個々の項目は相当に簡略な内容であることが予想できる(最近のちくま新書のごとく500ページに迫る分量ならともかく、標準的な200ページくらいの新書で全28章というのは、例外的に細かい区分だ)。こういうことを言うのは気の毒だが、かつて宮台真司氏が実験的に書いたような、「ツイートを編集した本」のような体裁ではないかという懸念も生じる。実際、目次として予定されている内容を十分に議論するなら、その分量は新書として出版するには手に余ると思われ、アメリカの教科書並みに分厚い書籍となるべきだからだ。
それから、岩波書店は生成 AI に関わる出版物の執筆を殆ど岡野原氏一人だけに依頼・依存しているようだが、逆に言えば文章が書けるプロパーが殆ど日本にいない(し、彼らの文章を岩波で編集できる人材がいない)ということでもあろう。これも、出版文化や情報リテラシーの観点ではリスクがある。岡野原氏が業績に応じて名声や金銭を得るのは構わないし、ゆくゆくはデジタル庁の長官など権力を手にするようになろうと構わないが、他の著者が育たないというのでは困る。
[追記:2026-08-04] 書店で見かけたので、ひとまず手に入れた。弊社では AI の活用ポリシーを公開していて、社内用に参考書を制作している。そのまた参考という趣旨で一読する価値はあろうと思ったからだ。でも、実際に手に取ってみると、やはり上記で示唆したように、まるで生成 AI で下書きしたかのような、小粒でまとまった事項の連続である。要するに書籍としての「力点」というものがないのだ。もちろん原稿を全て生成 AI で吐き出したまま入稿したとまでは言わないものの、本を書く「人間」なら持っているべき最大の要所のようなものがなくて、まったくフラットな叙述だ。個々の内容は参考になると思うが、あまりにも全ての事項が要約されすぎていて、一つの文から次の文へ移るために、論理的には全ての文と文のあいだに学術論文が何本か根拠として示されてしかるべきではないかと思うほど、一つ一つの文の繋がりが飛躍しているように見えてしまう。これは、生成 AI が吐き出す典型的な要約文のパターンだ。いくら生成 AI の利用が原則として推奨できるとしても、無制約な利用はやはり問題がある。