Scribble at 2026-03-20 10:09:49 Last modified: unmodified
Barry Loewer:大学生の頃、歴史の講義で「第一次世界大戦の原因」について話していたのですが、私は教授に「原因(causes)」とはどういう意味かとしつこく問い質したんです。教授はついに愛想を尽かしてこう言いました。「哲学の学部に行け、あそこならそんな質問に答えてくれるぞ」と。それで哲学部に行ったのですが、彼らも「確かに哲学者はそういう話を検討するが、答えが出ることは滅多にない」と言うんですね(笑)。
これは、ロバート・ローレンス・クーンがホストをやっているアメリカの番組で、PBS 系列などの放送局で配信されているが、YouTube のチャネルで僕らも自由に観られる。或るところでは、このクーンが中国共産党と関係があると言われていたりするし、ノベール賞を受けたような人物からカルトの信者などまで色々な人物をゲストとして番組へ招いているので、アメリカには番組の成り立ちについて懐疑的な人もいるようだ。あるいは、単純に科学者や哲学者を集めて、彼らにも解けない問いを語らせることで逆に宗教の意義を強調するといった世俗的なクリスチャンの手法と同じであるという人もいる。ともあれ、この番組には上のエピソードに登場するバリー・レワーだけでなく、ファン・フラッセンやチャーチランズ(チャーチランド夫妻をまとめて "Churchlands"と呼ぶ。なんだか日本語の「ニコイチ」みたいで失礼な話だが)といった科学哲学者もたびたびゲストとして語っており、日本でも、少なくとも科学哲学のプロパーやドクターの大学院生で YouTube のチャネルを知らない人はいないだろう(熱心に観てるかどうかはともかく)。
僕も、歴史を学んでいた経緯があって科学哲学を専攻して causation や laws of nature の研究を始めたので、上の逸話は面白いと感じた。ただ、僕の場合はいささか紆余曲折があって、中学時代までの考古学少年から即座に哲学を志す学生になったわけではなく、そのあいだに東京で働きながら法社会学を学んだり、学部は法学部法律学科で刑法を専攻した。しかし、そういう中でも(刑法の構成要件論を学んでいればご承知のように)因果関係という概念はしつこく登場するわけで、どういう経路をたどってでも哲学を学ぶようになってしまったのだろう。