Scribble at 2025-12-20 10:38:13 Last modified: 2025-12-21 08:31:45
ざっと眺めたけど、いかにもな選び方で、暇になった人が読んで「感動した!」とか大声で X とかに呟くような本だな。もちろん悪いとは言わないし、アメリカの黒人にとっては現在も考えたり対処せざるを得ない話題ではある。だが、これらを日本人として読んで、普遍的な差別の話題として咀嚼し、僕らの身の回りにある課題、高齢者差別だとか片親差別だとか部落差別だとか学歴差別だとか性差別だとかにまで考え至るような人であれば、こんなもんをそもそも他人に紹介してもらうよりも遥かに昔から勉強したり本を読んでるはずなんだよ。僕がこの手の「リスト」を有名人が公表することにあんまり社会的なインパクトがないと感じるのは、そういう理由がある。いつものような「社会科学的なスケールで言って誤差ほどの影響力もない」とまでは思わないにしても、わざわざ話題にするほどのインパクトはないんだよ。
それに、現実を見てみよう。ここに列挙されたものは洋書だ。この時点で、なんだかんだ言っても読める人は日本人の1,000人に1人もいなくなる。どれほど最近の子供が高校を卒業するときに英検2級レベルの英語を学んでいるとは言っても、はっきり言って英検2級なんてよっぽど自分で勉強を積み重ねないと、このような本を読む英語力はもちろん身につかないし、当サイトの「英語の勉強について」でも書いていることだが、殆どの「英語で書かれた本」は英文法の本じゃないのであって、そこに書いてある話題についての基本的な知識や情報あるいは正確に読むための素養や、場合によっては人生経験も必要なのだ。そういうことも考えると、この手の本を読んで有効に活用できる人は更に限られる(もちろん、だからといって素養がなければ読まなくてもいいなどと言うつもりはない)。
それに加えて、ここで列挙されている本は大半がハードカバーとして販売されており、これらをリンク先のアマゾンで見ると4,000円以上の値段だ。はっきり言って、最近の社会人が一ヶ月に費やす書籍代の平均は1,000円以下である(ラノベや漫画サイトのサブスク料金が入るのかどうかは知らない。もちろん、ラノベや漫画を読むことが「読書ではない」などという悪いアカデミズムは支持していない。そんなことを言い始めたら自己啓発本や大半のビジネス書だって除外しうし、きみたち都内のインチキ出版社が続々と世に送り出している「哲学書」だって除外できる)。X などで自己承認欲求の塊みたいな連中を相手にアンケートを取っている、社会調査論の基本も勉強していない子供も多いわけだが(敢えて極端な金額を掲げるやつが出てきて平均を引き上げるような偏った結果が出る、そしてそういう極端な値が平均に大きく影響するていどの母集団にしかならないことを知ってやっている、日販や出版社から受託してインチキ統計をやっているインフルエンサーも実は多いのだ)、実際には1,000円どころか本をそもそも殆ど読まないという人も増えた。これだけ無料で読めるコンテンツや動画があって、更には大学の教科書ですら大量に PDF が手に入るのだから、当然と言えば当然だ。そして、それに加えてここ数年で書籍の値段が急激に上がってきていて、更に洋書は円安があるので、おおよそ5年前、つまりコロナ禍が始まる前と比較して、洋書のハードカバーはジャンルによっては値段が3倍近くになっている。200ページくらいのペーパーバックなんて、僕がアマゾンを利用し始めた2002年から何十年も2,000円以下で手に入ったのに、最近は4,000円に迫る値段になっている。特に O'Reilly Media から出ている技術書などは、3,000円くらいで買っていた本が平気で1万円を超えてきている。
もちろん、これらの議論を通じて、オバマ元大統領が列挙している本を読まなくてもいいとか、読めないのは当然だとだけ言いたいわけではない。僕だって読みたい本が何冊かあるし(彼の奥さんの豪華本はいらない。なんであんなに高いんだ?)、もっと多くの人に読んでもらうよう日本語へ翻訳され、そして更に求めやすく文庫本になればいいと思うような本もある。ゼイディー・スミスの作品は、そもそも既に翻訳されている作品からして分厚いからか高いし、絶版になっているものすらあるのが残念だ。