Scribble at 2025-07-04 10:18:00 Last modified: 2025-07-05 08:06:14

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昨日は朝から出社していた。昼前に外出して、いちどはジュンク堂の大阪本店へ行こうかと思ったのだが、エレベータで降りているあいだに思いついて、方角は真反対になるが、MARUZEN&ジュンク堂の梅田店へ行くことにした。ちなみに、大阪の人間はおおよそ JR 大阪駅の北側を「梅田」と呼んでいて、これは地名の発祥(もとも北側は淀川沿いの湿地帯だったのを「うめたてた」ことに由来する「埋田」という地名だったらしい)から当然なのだが、南側を「梅田」と呼ぶのは抵抗がある。なので、ジュンク堂が北新地のアヴァンザ堂島に入居している店を「大阪本店」と呼ぶのは道理にかなっていて、「梅田店」と言われて北新地と茶屋町のどちらなのか困るような人は、要するに大阪(少なくとも大阪市)の人間ではないというわけである。なので、JR 大阪駅の貨物列車の操作場だった付近を、行政やマスコミは「うめきた」と呼んでプロモーションしているわけだが、僕らには強い違和感がある。なぜなら、それだとヒルトンや大阪駅前ビルのエリアが「うめみなみ」と呼べるような話になるが、あのエリアを「梅田」だと思っている大阪人はいないからだ。但し、「大阪」という呼称を使うと大阪市や大阪府、つまりは「大阪」と呼ばれている行政区域のどこにでも当てはまるので、JR 大阪駅の周辺であることを示唆したい場合は、敢えて近隣でも「梅田」と呼ぶ場合はある。たとえば「ウメチカ(Whity うめだ)」のような地下街は、数少ない例外である。

いや、そんな話はどうでもいいのだった。昨日は出社して、茶屋町にあるジュンク堂へ行ってきたのであった。会社が新御堂筋に近くなったので、新御堂筋に面したビルへ入居しているジュンク堂の梅田店にどのていどの時間でアクセスできるのか、試してみようというわけだ。ちなみに、弊社はフレックス・タイム制だから外出して2時間ほど書店に行っても構わないし、そもそも僕ら役職者は裁量労働制なので成果さえ出していればいいのである。何を遠慮する理由などあろうか(と、入社した翌月に部長となってから、この約20年間は好き勝手にやってきている)。で、会社を出てから、あまりにも暑いので Whity うめだの地下街を通って(これも余談だが、この程度の地下街を「迷宮」などと言うのは大阪の繁華街に殆ど来ない人か、単に方向感覚がない人、あるいは行先掲示板を見て歩くような、要するに JR 大阪駅周辺に土地勘がない人だろう)、長池筋の付近で地上に出てから、新御堂筋を北上した。ジュンク堂に到着すると、おおよそ所要時間は10分ていどであり、これは意外にも近いので好都合だと感じた。

久しぶりに梅田店にやってきたので、フロアの様子は変わっているかもしれないから、全てのフロアを簡単に眺めておこうと思って、新御堂筋側の小さな出入り口から店内へ入ると、まずいきなり雑誌コーナーの様子が違う。棚が総じて低くなっている。これは、他の書店でもよくあることらしいが、要するに万引き対策であろう。本棚ごとに真横からカメラを置くわけにはいかないので、1台のカメラで複数の本棚を撮影するには、棚が高いと死角ができるからだ。もともと店舗の設計が天井の高いつくりになっているので、本棚が高くても圧迫感の少ない店だったのだが、低い棚が増えると天井の高さが更に印象に残る。スタイリッシュな印象は受けるが、商品を陳列する効率は悪く、「本が多い」のも取り柄だった店舗の印象としては、僕からすると逆にマイナスだ。美術館じゃないんだから。

そして、エスカレータで上階へ上がろうとすると、エスカレータの付近に『原神』というゲームのフェアをやっているコーナーができている。つまり、雑誌や新刊書籍の売り場面積が約半分になって、どうでもいい万博のグッズやゲームのグッズが並ぶようになったのが1階の様子だ。これは「書店」と言えるのだろうか。

なんだか店舗の様子がおかしいなと思いながらエスカレータで2階へ上がると、文庫・新書などが置いてある。これも、エスカレータの付近には相当な広さを確保してギャラクター・グッズが並べてあり、ぜんぜん書籍を売ろうという意欲が感じられない。変に思ってフロア図を見ると、なんと6階と7階には「駿河屋」というオモチャ屋・・・ああ、オタクに怒られるから「ホビー・ショップ」とか言わないといけないのか・・・そういう店が入っていて、書籍の売り場ではなくなっていた(経緯はよくわからないが、ジュンク堂が駿河屋のフランチャイズに加盟していることになるらしい。なので、これらのフロアもジュンク堂の名義であり、6・7階の業態が変わっただけらしいが、本を買いに来ている人間にはどうでもいいことだ)。つまり、ジュンク堂の梅田店は地下1階から4階までと売り場面積が3割近くも減ってしまっている。ちなみに、フロア図を少し眺めて唖然としたので覚えていないのだが、5階は事務所なのだろうか。よく覚えていない。それに加えて、このフェアやイベントやグッズだらけのレイアウトに、ただでさえ低い本棚ばかりなのに、ロクでもない通俗本や駄本ばかりを並べる無駄な棚の使い方だ。これではキヨスクが少しデカくなったのと何が違うのか。「専門書のジュンク堂」などと呼ばれていたのは、とっくに過去の話であり、書籍を置いて売る気がないとしか思えない。

こうして、暗澹たる思いで次の階へ上がると、全体の売り場面積が縮小している影響で、全ての分野・ジャンルについて売り場面積が減っていて、コンピュータ関連の本などは大阪本店よりも蔵書が著しく少ないという印象をもった。ひょっとすると大阪本店の配架と比べて半分もないんじゃないだろうか。近くにはグランフロントのようにネット・ベンチャーどころか「さくらインターネット」のような規模の会社も入居しているエリアがあるけれど、どうもそこから人が本を買いに来ている気配はない(グランフロントには紀伊國屋書店が入ってるし、たぶん IT 関連の書籍の売り場面積では同じ程度になってしまっているから、なおさら来る意味もないのだろう)。

そして、「丸善」の名を冠している書店であるから興味がある方もいると思うので洋書の売り場を説明すると、確かに洋書の売り場はあったが、だいたい本棚の4列ぶんを使って、1列は英語版の漫画、1列は幼児向けの英語絵本、1列は小説、そして1列は英会話や TOEIC などの参考書とかラダー・シリーズなどの副読本である。つまり、もうここに洋書の専門書は全く置いていない。これ、この店舗がオープンした頃に訪れたときは、哲学の洋書だけで本棚を6台くらい使ってた記憶があるし、Springer の数学テキストなんかも大量に置いてあったので、もう全く消失したと言っていい。社内での力関係は分からないが、これではこの店舗で「丸善」のブランドを冠している意味はないだろう。

もちろんだが、遠方から買いに来る人なんて殆どいなくなり、洋書の専門書はアマゾンで買う人が多いだろう。僕だって、紀伊國屋や丸善の仕入れレートで洋書を現在の自宅の蔵書量と同じだけ買うなんてことはできなかったはずだ。なので、まず遠方からの客を期待して洋書を大量に置くのは在庫管理としても無駄でしかない。しかし周辺地域の人々が洋書を買うのかというと、申し訳ないが阪急ホールディングスやヤンマーや MBS の社員が洋書を読んでるとは思えないし、各種専門学校の子供、それどころか付近に展開している大学のサテライト・キャンパスにやってくる大学生ですら読まないだろう。こう言っては悪いが、サテライト・キャンパスの授業を受けるような待遇の学生というのは、大学当局から見ればさっさと授業料だけ払ってもらって、4年経ったら証書だけ渡して追い払いたいような人々にすぎない。これは、実は大学受験の予備校でも似たようなものである。予備校の運営元にしたら、「本校」に集まってこない高校生なんてのは、風俗街によくある「ビデオ試写室」の客みたいなものだ。テレビとティッシュさえ置いとけばお金を置いていってくれるような人たちでしかない。

しかし、そうは言っても他のジャンルだって蔵書が著しく減っており、これでは足を運ぶ値打ちがないと言わざるをえない。かろうじて、まだ天満橋のジュンク堂よりも蔵書は多いはずだが、棚の低さとかグッズなどの無関係な陳列の多さや過去に訪れた印象とのギャップという失望感を考慮すると、天満橋のジュンク堂でも事足りるという印象すらある。ということで、やはりアヴァンザの大阪本店が現在もなんとか安定した蔵書を確保しているようだから、本を買うときは引き続き大阪本店に行くこととしたい。

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