Scribble at 2024-11-29 22:10:42 Last modified: 2024-11-29 22:21:07

VSI のタイトルが、いまや色々な出版社から散発的に訳出・発売されていることはご存知かと思う。はじめは岩波書店の「1冊でわかる」という通俗的なシリーズで登場し、20冊近くはタイトルを数えた筈だが、いつの間にか立ち消えとなってしまった。それから暫くして、他の出版社で訳出されていると当サイトでもご紹介したことがある。ただ、丸善のように自然科学系のタイトルだけを訳していたり、あるいは他の出版社では殆ど単独の通俗本であるかのような体裁で(VSI のタイトルであることが殆どわからないような体裁で)出版されているので、書店でたまたま見つけない限りは、アマゾンなどで検索してもわからないであろう。

もちろんだが、こんなことは翻訳で読む人にとっての悩みであろうし、しかも VSI という特定のシリーズのタイトルだけに関心があるという、更に特殊な動機を持つ人だけの悩みであろう。しかるに、当サイトを暇潰しに眺めているようなプロパー諸兄は原書で読むのが当然であろうから、こういう話題は翻訳で読む学部生に「お得情報」を教えるためのネタくらいに考えてもらえばよい。いや、私の学生は東大暗記小僧の集団だから学部生でも原書で読ませたいというなら、それでいい。実際、僕も岩波の4冊(『グローバリゼーション』、『ポストコロニアリズム』、『デモクラシー』、『暗号理論』)を除けば、あとの20冊くらいある蔵書は全て原書である。

原書で読んだほうがいいと思える理由は、残念ながら数えるのが面倒臭いほどある。たとえば、『グローバリゼーション』の冒頭に、恐らくは "deconstruction" を訳したと思われる「脱構築」という言葉が出てくるのだが、こんなところでデリダの用語を使う必要があるとは全く思えない。このような「思想脳」なり「哲学脳」としか言いようがない職業病に犯されている人というのは、英語でごくあたりまえにものごとを解体するという意味で使われる言葉を呼吸するように業界用語へと直訳してしまうものであり、こういう事例も僕が日頃から「東大暗記小僧」と読んでいる人々の、利発・利口ではあるが結局は学者として凡庸なり無能としか言いようがない実例なのである。

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