Scribble at 2024-10-04 13:37:12 Last modified: unmodified

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本書が世に出てから、四半世紀に近い年月が、すでに経過した。これほど長い年月にわたり、多くの方々に読み継いでいただき、しかもこの度は新装版で引き継がれる運びとなり、言葉を失うほど感激している。ひとえに読者諸氏のお陰である。著者はかつて初版の「あとがき」に執筆の動機を記していた。それはすなわち、哲学の入門的な解説をしながら、優れたメルヘン作品が教えてくれる「ものごとの真相」を紹介したいという動機であった。

あとがきたちよみ 『ムーミンの哲学 新装版』

これは皮肉として受け取ってもらってもいいが、こういう本を書くというのは、プロパーの演習みたいなもので、日本の大学院では論文作成指導にかかわるシステマティックな指導体系もメソッドもノウハウもないのだから、こういう本が出てくるのは日本の現状を考えるとしょうがない。これは、寧ろ「哲学が求められたり不足している」などと傲慢にも想定されている読者の方ではなく著者や出版社の側にある問題の反映なのだ。

実質的に「ものごとを素人向けに説明する練習帳」みたいなものを他人様に有料で売りつける行為を非難することは簡単だが、では日本のプロパーにそれをどこかで訓練せよといったところでやりようがないわけだ。若手が集まってそんな研究会や勉強会を開いてる話なんて、僕が神戸大を出てネットで検索できる環境になってからでも、ついぞ聞いたことがない。やる気ないんだろう。だから、こうして場当たり的で刹那的な「啓蒙テロ」、と言うのが不当なら、「啓蒙ギグ」と言ってもいいが、こうしたことを延々と繰り返す他にない。そして、学術としての蓄積とか共有がなくて、せいぜい偶発的に出版される「論文の書き方」みたいな本を読むくらいしかないのである。

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