Scribble at 2024-09-29 14:53:16 Last modified: 2024-09-29 14:57:39
僕が昔から仕事の話で頻繁に聞くフレーズとしてよくわからないなと思ってることの一つに、「カスタマー・ファーストで最善の結果を出す」とかいった話だ。もちろん、電通・博報堂案件をやっていれば、こういうフレーズはビジアキやバスキュールといった最上位のエージェンシーだけでなく、場末のデザイン事務所でも聞かれるし、新卒に平然とそういうことを言う人もたくさんいるだろう。その結果として長時間残業が当たり前となったり、成果主義だ、裁量労働制だといった話題が繰り返されてきたことも、ウェブ制作に携わるマネージャや経営者なら誰でもご存知だろう。
でも、僕に言わせれば、これらはすべて「無能の言い訳」である。10分でウェブ・ページのデザインが納品レベルで考案できない人間は、3時間かけようと3ヶ月かけようと同じである。プロとしての能力は、しょせんそういうものであって、3ヶ月かけたら良いものができるなどと言うのは、たいていにおいて、実際に3ヶ月かけても有能な人間のクォリティーに届かない無能の言い訳である。
逆に言えば、プロとしてしかるべき訓練と素養と経験を身に着けているなら、四の五のと言わずにウェブ・ページなんてさっさと10分ていどでデザイン・カンプを作って納品するべきである。それ以上の時間や手間をかけても、事業者としてのウェブ制作会社は何にも儲からない。そして、しょせん儲からなければ、どれほど芸術家のようなことを言っていても食べてはいけないのである。そうして、これは重要なことだが、食べていけない人間には良いデザインもできないし、それを同僚や部下に教えたりブログなどで広く他人へ伝えることもできないのだ。
しばしば「清貧」などという言葉が聞かれるけれど、しょせん貧しくてもそういう人たちは生きて他人に何事かを果たせた人々である。食っていけなくて死んでしまった人々には、なにごとかを貢献する余力などないのであって、清貧による社会貢献などというものは、しょせん生存バイスや結果論でしかない。貧しいからこそ社会貢献したり、道徳的にも社会科学としても適切あるいは正しいことができるわけではない。それは、ただの correlation(しかも幸運な correlation だけが記録されたり何かの影響を残したにすぎないという条件付きの)であって causation などではない。