Scribble at 2024-08-08 12:15:16 Last modified: 2024-08-09 10:13:43
先月から『論語』を丁寧に読み始めているのだが、やはり時代背景や思想史としての理解についても合わせて読むべき本が必要だというわけで、さしあたり手元にあった森 三樹三郎氏の『中国思想史』(上下巻、レグルス文庫、1978)を紐解くと、一般向けには本書を読んで、専門に学ぶなら狩野直喜氏の『中国哲学史』を薦めるという説明があった。そこで、こうやって古書店から手に入れた次第だ。よく読まれた本だということで、古本としても流通している量が多いからか、本体が500円、送料を足しても1,000円ていどで手に入る。一読して手元に置く人が少ないのか、あるいは手元に置いたまま亡くなって遺品処理として古本の市場に続々と加わるのか、その辺の事情は分からない。だが、平成に入った時期に書かれた本でも、同じく平成に出版された同類の書籍ではなく、狩野氏の本書を薦める人がいまだに多いという点から言って、いまでも読むに値する一冊なのであろう。そのへんは、僕は門外漢であるからプロパーの判断を(過信はしないが)信頼している。
本書の内容や評価については、これから読むので詳しくは書かない。ただ、冒頭の「はしがき」を読むだけでも本書は読むに値すると感じさせるものがある。もちろん、僕は何度も言うが「権威主義者」だからだ。つまり、この本は狩野(ちなみに「かの」と読む)氏の手になる著書ではなく、彼の講義メモや学生のノートを使って編集された著作物である。そして、その編集に携わったのが佐藤廣治氏という人物であり、更には中国思想史ではなかば伝説的な人物として語られている小島祐馬氏や、中国文学の大家でもあった吉川幸次郎氏が手を加えている。こうした人々が携わって出来上がった著作物であるから、細かい事実に関する訂正は時代が下ると共に必要となるのは避けられないことだと思うが、解釈なりスタンスなりアプローチの整合性や一貫性としては、いまでも十分に読むべき価値があると期待できる。