Scribble at 2024-07-25 14:43:51 Last modified: 2024-07-25 14:44:39
いまのところ書店で眺めただけだが、昨年の11月に出た最新の通釈書が土田健次郎氏の文庫本だ。ただ、他の文庫版でも言えるように、漢文の語法などについて最低でも高校レベルの事項を十分に学んでいない人が読んでも、たぶん通釈しか参考にできないと思う。また、疑問に思った語(句)については漢和辞典を丁寧に引くことが必須であり、それなりに評価がある漢和辞典を手元に置くべきでもあろう。
これは強調しておいていいと思うのだが、『論語』という書物は使われている漢字が1,500字ていどと数えられている。日本で販売されている社会人向けにも対応する漢和辞典は、だいたいどれでも15,000字は収録しているので、どれを選んでも『論語』に出てくる漢字が収録されていない漢和辞典というのは無いはずである(収録する字の選定において、当然だが『論語』に使われている漢字を全て採用するといった方針で編集している場合もあろう)。
なお、『論語』というよりもたいていの古典については、だいたいどれもアマゾンのレビューは評価が高くなる傾向がある。とりわけ古典については、こういうレビューを書くのは大半が素人なので、自分が選んで買って読んだものが悪いわけがないという思い込みや自己欺瞞があるからだ。また、素人というのは自分自身で権威を選ぶという独立した見識や学識がないので、どうしても偽の権威主義に盲従する傾向があり、「どこそこ大学名誉教授」だの「中国思想史の大家」だの「論語研究何十年の碩学」だのという出版社の販促フレーズに幻惑されやすい。なので、こういうレビューは無視してもよい。実際、レビューを読めば分かるように、誤字脱字は多いし中国の古典を語るのに「モブキャラ」だの「マルクス主義」がどうのと、とても古典を語るに値しないフレーズを使っており、レビューを書いている当人が凝り固まったイデオロギーで古典に接しているのが逆に明白だ。