Scribble at 2024-06-11 13:41:38 Last modified: unmodified

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会社で営業メールとかを受けていると、不思議な内容のメッセージを見かける。

たとえば、さきほども「SE歴10年の経験」などと言って、コーダをやっているというフリーランスからの営業メールがきたのだけれど、これおかしいよね。だって、「SE歴10年」が本当なのかどうかはともかく、それってつまりこの人は SE からコーダにクラス・チェンジして、コーダ歴で言えば経験が0年でコーディングの仕事をプロとして請けようってことじゃないか。同じシステム開発の業界にいながら、コーディングの仕事を舐めてるのかな。逆に言えば SE なんて、そんな他の職能を片手間に始められると思い込めるほどの、幅広いスキルを求められる職能でもないと思うがね。日本で SE と言えば、要するに営業のことだからね。

ともあれ、ここ数年はコーディングと動画制作の営業メールがどんどん増えている。その理由として考えられることは、おおよそお気づきかと思うけれど、まずコーディングというのは生成 AI が短時間で同じていどの品質で成果物を吐き出すようなパフォーマンスを達成しつつあるからだよね。それに、そもそもスクラッチからコードを書く人も減ってるわけだ。特に、WordPress で構築するウェブサイトとなると、もうテンプレートにしてもプラグインにしても、与件に応じて色々な一式が用意されているわけなので、正直なところ HTML や CSS や JavaScript や PHP を全く理解していない素人が「コーダ」だの「プログラマ」だの「デザイナー」だのを名乗ってたりする。弊社のように広告代理店案件を受注してるレベルの会社はともかく、もう中小企業などから直に仕事を請けてるようなウェブ制作会社は、そういう連中と価格競争してるわけなので、法人としてのまともな財務状況を維持するのは困難になってきてる。客に向かって、「ウチは会社として受注してるから、経理の給料分とか会社全体で配賦する売上が必要なんだ」とか言ったって通じないわけだし(相手も会社員だから分かってるはずなんだけどね)。

それから動画の制作という営業が多いのは、これはスマートフォンでガキの頃から動画を簡単に編集するアプリケーションが出回っているため、そもそも動画編集という職能へとイージーに入ってくる人が増えているんだよね。高校生の頃から Vtuber とかやってるんだから、そら簡単に思えるんだろう。でも、実際には、特に個人としてやってる連中というのは、だいたい半分くらいは Adobe 製品なんてもってないわけ。個人が趣味として使うようなホビー用途のアプリケーションで、まさしく素人に毛が生えたていどのことしかやってないし、できないんだよね。その手の連中って、要するにツール依存だから、ツールが実行できないフィルターの効果は加えられないし、ツールが対応してない機能を使う編集はできない。そのツールがディゾルブのトランジションをサポートしてなかったら、トランジションはできませんということになる。当然だけど、プロの制作会社でそんなのに仕事を発注するわけがないし、いちどでもやればバレるわけだから、次々と新しく人が参入してくるのに仕事がもらえるわけでもないから、そうやってあぶれてくる。

とにかく、デジタル・ネイティブなんていう出鱈目なキーワードをマスコミなんかが使ったおかげで、ただのサービスやツールのユーザでかない若造が翌日にでもプロとして食っていけるかのような錯覚に陥っているのが現実なんだよね。でも、出来合いのツールを覚えて幾ら手業が速くなっても、それはただのオペレータなんだよ。僕らが広告代理店案件とかで仕事をお願いするようなクリエイターではないわけ。クリエイターというのは、与件と要件に応じて、必要なら Adobe Premiere Pro のプラグインを自分で開発してやろうってくらいの連中なんだよね。

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