Scribble at 2023-10-20 11:18:13 Last modified: unmodified
これはウェブ制作のフリーランサーとして幾つかの案件に携わっている連れ合いとも20年近くに渡って話していることなのだが、簡単に言うとウェブ制作という事業が財務的な点で言って継続の難しい事業となっている理由の一つは、単純に費やしている時間という点で最長と言っていい、フィードバックを待機する時間とかクライアントとのやりとりにかかる時間を「工数」として請求していないという事実にある。
これはあくまでも一例だが、いま僕は或る公共交通機関系の会社が運営している介護施設のサイトについて、WordPress のテンプレートを書き換えてもらいたいという要望を受けたディレクターと、日程や作業環境についてあれこれと調整している。でも、実際にディレクターがクライアントに見積もりとして出しているのは、WordPress のテンプレートを書き換えて目当てのページに置き換えるのにかかる所要時間から計算した 2.5 万円(だいたい午前中の2時間ていど)だけである。つまり、それまでにかかる相談とか調べ物とか日程の調整とか、恐らくは実際に作業する2時間に比べて10倍を超えるような他の作業については、何も請求していない。これは、はっきり言って陶芸家が芸術作品を売るやり方であり、企業がやるビジネスではない。
企業というものは、原則から言って、販売なり成約なりサービスの提供にかかっている全てのコストを価格や契約費用に盛り込まなくてはならない。これが、経営陣なり株主なり銀行といったステークホルダや債権者に対するサラリーマンの責任というものである(大半の企業は直接・間接のファイナンスを受けているし、中でも間接金融として借金している企業が大多数を占めるので、借金しながら事業所を使ったりパソコンを使って仕事をしているという自覚が必要だ)。
そして、サラリーマンというのは一人だけで仕事をしているわけではなく、同僚、上司、管理系の部署、そして社長など他にたくさん人たちの仕事が必要だ。電通案件でカンヌを獲るようなデザインだろうと Chief Privacy Officer としての優れた管理業務だろうと、組織がなければ成り立たない。したがって、お礼を言う必要はないとしても、ビジネスとして請求する金額には全ての人々の手数なり労力に見合った費目なり金額を設定する義務があるのだ。口先で安請け合いして仕事を取ったり物を販売する営業やディレクターが、数字としての「売上」は増えても営業利益を縮小させる内部の敵であると言われるのは、これが理由なのだ。自社のサービスや人員のサポートを全体のコストとして安売りするような発想の人間は、ディレクターだろうと取締役だろうと、必ず長期的には会社を破滅させる。