Scribble at 2022-10-25 06:02:35 Last modified: 2022-10-26 11:50:12
或るキャンペーンのサイトで AWS を利用している。これまでにも何度か紹介している案件で構築したリソースの運用だ。昨年から僕が IaaS の管理をしていて、昨年度もこの時期に第1回目のキャンペーンを実施している。そして、このほど本年度のキャンペーンが始まった。
キャンペーンの開始から数日のあいだはアクセスが伸びる。もちろん幾つかのソーシャル・メディアやプレス・リリースなどにより、積極的にアクセスを呼び込む施策を取るからだ。いくら昨年度のキャンペーン・サイトとして一定の人々に周知されたからといって、たいていの人は「今年も同じキャンペーンをやるのかどうか」なんて気にしてないし、そんなことのためにサイトをブックマークしたり、定期的にアクセスして様子を見るなんてことはしない。というか、ウェブ・マーケティングの経験則として、ユーザというものは良かれ悪しかれ潜在的には誰もが「ネットいなご」であり、自分の仕事や生活にかかわるコンテンツやサービスでもない限り、ただのキャンペーン・サイトに定期的な巡回だのブックマークだのと、そんな発想や習慣をもったりはしない(だからこそ競合が付け入る余地が常にある)。そんな発想や習慣をもっているのは、僕ら運営側で職責をもつ人間だけだ。
ということで、何事かを始めたら告知しなくてはいけない。所与あるいはデジタル・ネイティブでも何でもいいが、世界規模の通信ネットワーク(その一部は「インターネット」と呼ばれたりする)があり、ウェブにはコンテンツがあって当たり前という環境においては、人はたいてい検索などしない。こんなことは、是非の問題は別としても、インターネットが普及する前から同じである。何か面白そうな話題や記事がないかどうか、毎日のように図書館へ通ったり、あらゆるテレビ番組やラジオ番組を録画・録音したり地方局まで探して回ったり、あるいは数多くの新聞や雑誌を購読する人なんて、もともと大衆向けの報道やメディアが誕生したときから殆どいないし、各地域や国での人口比率としても増えていないと思う。よって、特定の企業や商慣行や人間関係や成果について色々と毀誉褒貶があろうと、広告・宣伝というものは商品やサービスだけでなく、何についてであれ情報全般の普及にとって(不可欠かどうかは疑問があるにしても)重要な活動なのである。これを軽視したり否定するのは、社会科学の観点では非現実的だし不当ですらあろう。
上記のグラフは上段も下段も CloudFront に対して1分間に要求されたリクエストの合計を表し、上段が本日(2022年10月25日)を起点として過去1週間分のグラフを示していて、下段が過去2日分のグラフである。グラフの変化を見れば、たとえば LINE でキャンペーンの告知を投稿したとされる21日にリクエストが伸びているという顕著な特徴は分かるが、僕が強調したいのはこれではない。僕がこれまでの段落で述べた議論を通して言いたいのは、そもそも何も告知しなければ、このグラフは殆どゼロのまま推移するであろうということだ。そして広告・宣伝の活動というものは、LINE で告知してアクセスがドッと増えるような手法だけを意味するわけではなく、それ以外の状況でアクセスしてくる人々の意欲とか動機に働きかける活動でもある。
IaaS の管理・運用担当者として言えば、1秒間に標準的なクォータ(利用制限値)で250,000リクエストを処理できる CloudFront を使っている以上、アクセスが増加すること自体には何の不安もないし想定内だ。逆に LINE や Instagram や Facebook で告知したら有意にアクセスが増えてくれないと困る(そういう場合、たいていは「インフルエンサー」なる人々に告知してもらうよう委託して一定のコストがかかるのだから、なおさらだ)。今回のキャンペーンで公開しているページは、主にトップ・ページと、ユーザが情報を投稿するフォームの二つであり、トップ・ページは1ページを表示するのに約140リクエスト、フォームのページは約50リクエストを要する(CloudFront が捌く「リクエスト」とは UA からのリソースごとの要求であるから、CSS ファイル一つ、JPEG 画像一つ、HTML ファイル一つ、ウェブフォントのファイル一つと個々にカウントするので、いわゆる「ページ・ビュー」や「アクセス」とは違う)。平均して1ページ分のレスポンスに処理する必要があるリクエストが100だとすると、単純に言えば標準的な CloudFront のクォータでは1秒間に2,500人がアクセスしても耐えられる。もちろん、それ以上のアクセスには AWS にクォータの引き上げを申請できる(ただしクォータの引き上げには根拠を求められる場合があり、即座に制限を引き上げられる保証はない)。レスポンスにかかる所要時間はキャッシュの応答だけなので考えないでおくと、1秒間に2,500アクセスということは、わずか1分間で昨年度のキャンペーンで受け付けた、ユーザからの投稿の総数を超えるような数である。これほどのアクセスが、しかもフォロワーが何百万人もいるわけではないインフルエンサーから告知されたていどで集中して送られてくるとは考えられない。実際、上記で最も値が大きい LINE での告知によるリクエスト数は1分間で約30万回であるから、1秒間に直すと5,000リクエストである。CloudFront のクォータである250,000リクエストと比較すれば、今回の最も多くアクセスを集めた成果の約50倍にも耐えられるということだ。
このほかにも色々と言えることや議論できることはあるが、これもまた何年か前のスクラッチ・キャンペーンで採用した仕様の話と同様に、少し時間を空けて特定のキャンペーンの話をしていることがわからない状況で、きとんとまとまった文書として取り上げるかもしれない。僕自身が昨年から AWS でサイトを運用するようになって気づいたことなのだが、いわゆるメディアとかウェブ制作会社や個人が公開しているページでは、AWS を利用した運用実績として具体的な話が殆ど出てこない。コンソール(管理サイト)での手順についてもスクリーンショットなどを使った解説が非常に乏しいという印象がある。確かに、AWS に限らずクラウド・サービスの多くは頻繁にサービスのラインナップや個々のサービスの仕様だけでなく、それらの運用方法として管理画面の UI も次々と変わる。そのため、解説の文章やスクリーンショットの有効期限が半年ていどと言ってよいほど、本気で解説したいなら頻繁にコンテンツも更新しなくてはいけない。しかし、たいていの自意識だけでウェブ・ページを公開しているような人々に、その手の情報発信元としての節度や責任感なんてゼロだ。よって、書きっ放しのページが続々と放置され、検索しても役に立たないページの山にウンザリさせられる人も多いと思う。確かに、コンテンツの正確性を維持する手間を考えたら放置したくもなるのは分かるが、放置するなら公開した日時を冒頭に明記したり、実際に自分でも同じような情報を検索した経験があればコンテンツに有効期限があるという注意書きを一つ付けるくらいの誠実さはあってよいはずだ。俺は誠実な偽善者なので、自分のサイトでは注意書きをつける。
というわけで、具体的な説明も有用だと思うので書きたいのだが、もちろん有効期限があるコンテンツをどのように無駄にならずに公開するかは一つの課題である。偽善者として誠実にコンテンツを運用したいのは確かだが、いかに有能でも僕にだって限界はある。それに、MD の落書きで以前も宣言したとおり、僕はウェブ制作の業界にかかわる話や実務についても、積極的に何かを議論したり有用なコンテンツを制作して公開する意欲は少ない(たとえば、いまどこかの出版社から WordPress のセキュリティについて他社のロクでもない本を凌駕するような一冊を書きませんかと誘われたとしても、僕は断ると思う)。なので、あまり期待はしないことをお勧めする。