Scribble at 2022-10-05 15:27:24 Last modified: 2022-10-18 12:58:34

以前から不思議な話なんだけど、科学哲学の専攻でもなければ学部時代に理学部の学生だったという僕の先輩みたいな経歴があるわけでもない哲学のプロパーで、高校の物理を知らないという理由で批判されているような人を見た試しがない。なのに、不確定性原理や不完全性定理や量子論やトポスやベルの不等式などといった、ナウい話題については数多くの批判を見受ける。それこそ「サイエンス・ウォーズ」の顛末にも関わるし、世の中には「相対論は間違ってる系」とか「不完全性定理は間違ってる系」と呼ばれる、たかだか理学部の学部か修士を出ただけで相対論や不完全性定理を覆すような欠陥なり別の真理を見つけたと称する、あえて言えばキチガイが山のようにいるわけだ。でも、そういう連中の多くは、素人であればなおさら高校レベルの数学や物理を正確に理解していないせいでデタラメを書いたり喋ってる可能性もあるというのに、それらあまりにも程度の低い過ちを基にした自称学説なるものは、黙殺されるからか、そういうレベルのバカ話でしかないという指摘すら多くを見かけたことがない。鴨さんのような人物による批評は、やはり例外的なのだろう。

僕が思うに、これもまた批判する者でさえ、何を批判するべきかという点で theme-setting のバイアスなり関心の誘導や狭小化に陥っていると考えたほうがいいような気がする。世の中は、相対論や量子力学や圏論という分野の理解だけが間違っているような人物であふれているわけではない。それどころか、高校レベルの物理すら正確に理解していないような人で満ち満ちており、おそらく僕も〈さんすう〉が得意な東大 HPS 出身者の方々からすれば「Synthese に論文を掲載されたこともない、哲学を知らないやつら」の一人であり、京大哲学科の人々からすれば「The Journal of Symbolic Logic に論文をアクセプトされてもいない、論理学を知らない人間のクズ」の部類なのだろう。

でも、そうであれば目立つバカを相手にしているだけではいけない。僕は学術研究者にアウトリーチの(少なくとも職責という意味での)責務などないと思うし、同じように素人やキチガイを叩き潰す道義的責任もないと思う。よって、目立とうと目立たなかろうとバカを相手にする必要など最初からないわけで、それゆえ当サイトも或る意味では「助かっている」のかもしれない。しかし、どのみち相手にするのであれば、学術研究者の社会的な地位と見識にかけて、やはり cut the neck of chicken でなくてはいけない。足やトサカを切り落としている程度では、無知無教養とそれによる害悪を根絶できない。本当に息の根を止めたいなら、どんな生き物でも頭を叩き潰すのが最善だ。MD ではともかく、こちらのサイトで僕が素人を相手にせず、もっぱら哲学のプロパーや物書きを相手にして無能呼ばわりしているのは、それが理由である。

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