Scribble at 2022-08-16 17:39:52 Last modified: 2022-08-16 17:47:53

会社で受けてる問い合わせフォームは、長らく(10年以上)僕だけが受信してから、サーキュレーションの価値があると判断したものだけを経営会議メンバーに転送していた。もちろんだが、大半は他人に見せる価値などない。営業、営業、営業、また営業で、その大半は聞いたこともない自営業者や〈名ばかり上場企業〉の三下が、いきなり仕事をくれだのサービスを使ってくれだの名刺交換したいだのと言ってくる。なんでそうする必要があるのか、説得力のある話など書いてきた試しは一度もない。そんなもんに、いちいち対応なんてしていられない。無意味な会議や応対や面接なんてものは、零細に限らず全ての組織にとっては1秒でもやるだけ無駄だ。もちろん、多くの会社は「死」に至るまでに何百秒も気楽に使えてしまうからこそ、無自覚に少しずつ体調を悪化させてしまうわけだがね。そういう色々なリスクに気づいて軌道修正する役割を持つのが、社内ではバック・オフィスや社外取締役だし、社外では監査機関だ。こういう効用を軽視して、馬鹿が営業や生産だけで企業活動を続けられると思って「えいえいおー」などとアホづらで仕事してるからこそ、大半の会社は5年もたたずに倒産するのである。

ということで、そういうメールを眺めているのも時間の浪費なのだが、個人としては景気とかトレンドなどに応じて傾向が変わってくることが分かって、それなりに面白い。スパム・メールにも同じようなことが言えるので、そろそろ日本でも20年以上に及ぶスパム・メールの記録が色々なところにあるわけだし、まじめに調べてみると興味深い成果があるかもしれない。日本の社会学者や民俗学者なんて、部落差別かサブカルでしか成果を上げられないし上げるつもりもないんだろうから、こういうことでもやって点数を稼いだらどうなんだろう。

たとえば、このところ多いのが動画編集プロダクションの営業メールだ。これだけ動画コンテンツが流行してくると、もちろん手を染める人が増えるのは当たり前なので、有名な YouTuber 自身が動画編集に長けていたり動画編集のスタッフを抱えていたりする時代になる。でも、参入する人が多くなれば競争になるから、大半が仕事に困るのは当然であろう。そんなのはどこの業界でもたどってきた歴史があるし、その末に「ワープロ入力業」とか「電算写植業」みたいに殆ど消滅してしまった業界もある。そして、何度も書いているが、ウェブ制作という事業も10年くらいのスパンで消滅すると僕は思っている。

それなりにコーディングの技術を持っていると自負してきた僕でも、コーディングなんて既に趣味の問題だと思う。コーディングは昔から価値を過小評価されてきたけれど、その僅かな価値を徹底的に貶めた元凶は Google の AMP だった。でも、既に AMP もイナゴ同然に一過性の厄災として過ぎ去り、そのあとには CMS や CI サービスが吐き出したクズみたいな HTML や CSS のコードというガラクタしか残らないという風情が残ったのである。とはいえ、どのみちコーダという職能では、昔から一部の人間しかコードの品質に興味を持っていなかった。大半のコーダにとって syntax は、実は昔から「見栄え」という semantics を満足させるための必要条件にすぎなかった。さらにコードそのものの見栄えや整形なんてものも、pragmatics という詰まらない些末なポイントでしかなかったのだ。semantics において結果が変わらなければ、pragmatics なんて(デザイナー上がりの)コーダの多くにとってはどうでもいいのである。

営業メールの話に戻すと、いっときは毎月のように営業メールを送ってきていた人材派遣系の会社が喜々として使っていたフレーズが「AI」や「人工知能」である。なんでも、人工知能で派遣先の会社との適合性を評価したり、求職者のレートを分析したりできる夢のようなアルゴリズムを、特許も申請せずに公に宣伝して回っているらしい。その時点で嘘だとわからないような馬鹿を狙っているのだろうとは思うが(もしそんなアルゴリズムを開発したら特許申請するのが当たり前である)、あまりにもほほえましく滑稽なので、メールをサーバから自動削除せずに敢えて何度か受信していたのだが、そのうち「人工知能」という言葉を連呼するのはやめてしまった。たぶん、そんなメールを書いても無駄だという「人工知能」の判断がはたらいたのだろう。

何が「人工知能」だ。本物の人工知能ですら凌駕する人間に送るような文面ではないな。

  1. もっと新しいノート <<
  2. >> もっと古いノート

冒頭に戻る


共有ボタンは廃止しました。他人へシェアしてる暇があったら、ここで読んだあなたが成果を出すべきです。