Scribble at 2021-11-26 19:06:02 Last modified: 2021-11-27 14:15:21

ウェブサーバのデプロイメントを設計するにあたって、インスタンスに必要なスペックだとか帯域を見積もる手順とかトラヒック理論上の仮説というのは、実際には各社が北斗神拳のように隠し持っているのが実情だ。ストレージの容量については、オライリーから翻訳が出ている『キャパシティプランニング――リソースを最大限に活かすサイト分析・予測・配置』(2009)が多少の参考にはなるし、それ以外にもライブドアの技術者による『4Gbpsを超えるWebサービス構築術』(2009)といった本はあるが、内容としてはせいぜい『日系SYSTEMS』に掲載されるような概略であり、デプロイメントに必要な肝心の〈計算〉の理論的な根拠や仮説についての説得的で具体的な記述が不足している。そして、このような実情は日本だけでなく世界中でも似たようなものだ。

よって、たとえば広告代理店さんやクライアント企業から、キャンペーン・サイトを作りたいのでサーバのスペックを教えてほしいとご相談をいただいても、まず都内だろうとニューヨークだろうと、窓口となる人材がおおよそのスペックすら思い描けない。もちろん、ウェブのディレクターがトラヒック理論を知っている必要はないので、計算して何らかの答えを出す必要はない。具体的な数値として答えられなくても、何らかのダイアグラムを持っていればいい。縦軸やら横軸やら、あるいは幾つかの表の項目を組み合わせて、おおよそ与件から導き出せる推定を出せたらいいのだ。その理論的な根拠は、われわれのような数学ないしはコンピュータ・サイエンスの勉強をひととおりやっている人間が用意すればいい。しかし、これがいつまでも会社ごとの(場合によってはデタラメな)機密情報のように扱われるのは、はっきり言って馬鹿げている。こういう情報こそ、積極的に公開するなり出版して共有したほうがいい。

しかし、そういうことをするに当たって幾つかの問題や障害がある。その筆頭を紹介すると、そういうことをすると損になる。特に IT ゼネコンや一部のウェブ制作会社では、こういうデプロイメントの設計実務について根拠となる理論を、クライアント企業どころか大半のウェブ関連企業の人材が知らないという非対称性を利用して、利益を含めたオーバー・スペックのプランを提案している可能性がある。そうでもしない限り、儲けにならないというわけだ。特に、広告代理店案件では正確に根拠を示せばランニング費用は出る場合が多いけれど、中小企業を直に相手にする制作案件では、ランニング費用を〈ケチる〉会社が圧倒的に多いため、最初にシステム構築の初期費用として請求できる額面を可能な限り高く見積もるという商慣習が出来上がっていたりする。逆に、正当な見積もりでのランニング費用を請求すると「ホームページ詐欺」などと呼ばれたりする恐れがあるのだ。

とりわけ、この手の正当な見積もりでの請求が通らないクライアントが・・・大学だ。大学と某公共放送は、ウェブ制作業界の常識として「実績づくりのための持ち出し」で受注するものあり、何度も受けるような仕事ではない。そして、そういう割り切りで受注するウェブ制作会社や代理店が入れ代わり立ち代わりウェブサイトに手を入れるため、大学のウェブサイトというのは情報設計構造が頻繁に正当な理由もなく変更されて URL が変わってしまうのである。

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