Scribble at 2021-07-28 11:58:03 Last modified: 2022-02-05 12:09:24
そういや、誰それが言い出したなどと間違って伝えられているフレーズというものは他にもある。たとえば、"What gets measure gets managed."(測れるものは管理できる)というフレーズは、色々な分野で間違ってウィリアム・トムスン(ケルヴィン卿)の言葉として説明されたり、あるいはピーター・ドラッカーの「格言」の一つとして紹介されたりしているらしい。
現在、このフレーズの発祥は殆ど無名と言ってよい V. F. Ridgway という研究者が書いた "Dysfunctional Consequences of Performance Measurements" (Administrative Science Quarterly, Vol.1, No.2, September, 1956, pp.240-247) という論文の中で書かれたのが、もっとも早い事例だろうと考えられている。しかし、上記の引用でもお分かりのとおり、このフレーズを紹介しているリッジウェイの時代には、既にこのようなフレーズは短絡的なものの考え方のパターンとして、よく知られていたと思われる。それゆえ、このフレーズを紹介したリッジウェイは、寧ろ "What gets measure gets managed." という短絡的な物事の見方を否定する論旨で議論していたのである。よって、このフレーズを「リッジウェイの格言」のように扱うことも不当であろう。
・https://medium.com/centre-for-public-impact/what-gets-measured-gets-managed-its-wrong-and-drucker-never-said-it-fe95886d3df6
・https://www.theguardian.com/business/2008/feb/10/businesscomment1
また、いまだにケルヴィン卿の文書から「ソース」を見つけようとしている人物もいるにはいる。
・https://athinkingperson.com/2012/12/02/who-said-what-gets-measured-gets-managed/
なお、上記に関連して、「測定できないものは管理できない、と考えるのは誤りである。これは代償の大きい誤解だ」というW・エドワーズ・デミングの記述("The New Economics for Industry, Government, Education," 1993)をドラッカーの言葉として受け売りしている人もいるらしい。