Scribble at 2021-03-24 18:03:34 Last modified: 2021-03-24 18:09:22

かつて MarkupDancing で「ウェブ業界はどこを向いているのか」という論説を公表していたことがある。広告代理店案件を始めとしてウェブサイトの制作という事業についていくらかの経験や知見にもとづいて批評したものだが、その中で将来は広告代理店案件の市場と「街のホームページ屋さん」といった零細市場とに格差が拡大して、実際にそうであることが明白となりつつあるが、街のホームページ屋さんは死滅するであろうと予想した。これは、零細事業者が経営として立ち行かなくなって消滅するという意味だが、その原因は電通や博報堂からの案件を取れないという、最初から分かってる能力の格差や、あるいは取引先として口座を開けないという人間関係などが大きな原因なのではなく、要するに彼らの競合は我々のような広告代理店案件を扱う上流のプロダクションではなく、専業あるいは副業としてのクラウド・ワーカーたちの存在なり増加なのである。

それに加えて、そもそも中小零細企業に独自ドメインとかオリジナルのコーポレートサイトなんて必要なのかという(或る意味では卓袱台返しの)議論があり、実際に一部の事業者はコーポレートサイトを不要として、Facebook Page やインスタグラムや YouTube といった無料のプラットフォームだけで宣伝活動を展開していたりする。YouTuber などは、その最たるものだろう。彼らの YouTube チャネルを超えるオリジナルのウェブサイトを代わりに作る能力をもつプロダクションなど存在しない。ビジネス・アーキテクツ? ああ、そんな会社が昔はあったよね。imgsrc やキノトロープやバスキュールですら過去の存在なのに、いまどきそんな名前を出しても意味がないか。

ただ、僕の予想よりも事態は深刻と言っていい。当社も例外なく、いまや広告代理店案件も非常に厳しい状況となっていて、業界全体が地盤沈下を起こしている。営業のメールも、かつては聞いたこともない学生企業や素人の個人事業主からが大半だったが、最近は名前を聞いたことがある東京の制作会社が営業メールを送ってくる。実際に事業に携わっている側から見た限りでは、こうした厳しい状況になってきている原因は、広告予算を潤沢に持っているクライアント企業の予算配分が変わってきていることにあるのだろう。簡単に言えば、芸能人のデカイ顔写真とロゴを貼り付けておくようなプレゼンスの確保やパブリシティを目的とした、〈打ち上げ続ける打ち上げ花火〉といった広告が本当に収益やブランディングに貢献しているのかという話である。例の〈ブタ〉発言で地位を追われた人物は、携帯キャリアの広告でも知られていたわけだが、あの犬が出てくる広告は有名と言えば有名だが、別にあれでソフトバンクと契約するとか、ソフトバンクというキャリアがあることを覚えるわけでもないだろう。

ウェブサイトについても同じである。動画やアニメーションなどといった旧世代のメディアの焼き直しをどれほどコンテンツとして提供しても、テレビやラジオで見聞きしていた効果を超えるものではない。ウェブにはウェブという〈媒体(メディア)〉としての強みがあり、それを効果的に活かしたのが Twitter などでのパフォーマンスに近い運営と言える。YouTuber を起用して宣伝するのも一つの手ではあるかもしれないが、やはり手法としては旧来の芸能人や有名人を前面に押し出した〈古臭い〉広告手法という印象が拭えないし、実際に収益の効果も似たようなものだろう。「似たようなもの」ということは、つまるところ大して効果がないのだ。その広告をやった場合とやってない場合とで A-B テストができないという事情に胡座をかいて「この女優を使ったから売上が上がった」と言っているにすぎない。しかし、いまやウェブではクライアント自身がこのような A-B テストをやってしまえる状況が整いつつある。クライアント企業の企画部や宣伝部に、ウェブのリテラシーや技術のある社員が増えてくると、自分たちでバナー広告やリスティング広告に出稿できてしまうからだ。

そして、僕は〈良いこと〉だと思っているのだが、クライアント企業のリテラシーが向上すると、コーポレートサイトなり広告なりといったコンテンツを制作する取引先を、クライアントが自社で選定したり探せるようになるため、はっきり言って中抜きあるいは紹介業に過ぎない広告代理店への委託が減るのは当たり前である。予算が半分で済むなら、マーケティング上の施策を2回実行できる。クライアント企業の担当者の役目は効果を出すことにあるので、回数が増えたら結果としてのイベント回数なり収益の底上げチャンスも増えるのが当然だ。芸能人のコマーシャル1回で1.5倍の効果があったところを、自力の広告を2回やって1.2倍ずつの効果があれば、大して変わらないではないかということにもなる。

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