Scribble at 2021-03-20 09:03:39 Last modified: 2021-03-23 07:53:20

「自炊」と呼ばれる印刷文書のスキャンが普及するようでいて普及しない最大の理由は、もちろん〈面倒臭い〉の一点にある。僕も会社に保管していた大量の書類を、昨年度の本社移転時に思い切って廃棄したのだが、それに先立って(InDesign の元データがある社内規程の類はどうでもいいとして)帳票・記録の書類をどうするか悩んだものだった。30秒くらいだがね。

もちろん、これまでにも印刷文書や記録書類をスキャンしたことがあって、会社でやるときは複合機に20枚ずつセットすればフィーダが1枚ずつ処理してくれるから便利なのだが、それでも面倒なのがステープラの針をいちいち引き抜いて紙をバラす作業だ。ステープラで留めてある書類というのは、単に針を引き抜くだけでは不十分である。留める際にステープラの針が貫通するのと同時に紙同士を巻き込むため、針を引き抜いた後も紙同士が一定の強さで互いに引っかかっているのだ。その状態でフィーダに通すと、紙同士の引っ掛かりが強くてフィーダに何枚も巻き込まれて紙詰まりを起こすことがあり、それが起きるとたいてい書類が破損して使い物にならなくなる。なので、ステープラの針を引き抜く作業も含めて簡素化するために、敢えて針を通してある箇所をハサミで切り落としてしまうことが多い。すると、針も無くなるし、紙同士の余計な纏まりもなくなって、フィーダに通しやすくなるからだ。

で、そんなことを延々とやるわけにはいかない。もちろん、年度の終わりに恒例の作業として少しずつ書類をスキャンしておけば済んだ話だし、ISMS やプライバシーマークの実務なんて15年くらいやってるわけだから、とっくに帳票くらい電子化できていた筈だし、実際に10年ほど前から計画はしていた。しかし、そんなことを出来ていない現状で悔やんでも仕方ない。そういうわけで、30秒ほどの間に決めたのは、ISMS やプライバシーマークの帳票に保管年数の法定年限はないが、せめて前回の監査で利用したものまでは残すこととし、今期から ISMS の認証は取り下げたため、プライバシマーク(2年ごとの監査)で2回の監査に相当する4年分の記録は残すことにした。よって、4年以上前の書類は全てスキャンもせずに廃棄しようと決めた。

書類の廃棄は簡単だ。今回は、ヤマト運輸が提供している「機密文書リサイクルサービス」を利用した。注文すると、配達のスタッフが配達のついでに立ち寄って専用のダンボール箱を届けてくれる。先払いでも、あるいは回収した書類の溶解処理が終わってからの後払いでもいいが、A4 の書類が3,000枚くらい入る相当に大きな箱へ詰め込んで、再び配達のスタッフへ引き渡せば終わりだ。箱1個で2,000円弱の費用はかかるが、こんなものをいちいちシュレッダーにかけている暇など無い。それに、事務用の安物シュレッダーにかけたとしても、本当にその会社の情報がほしいなら、5mm くらいに裁断された紙クズからでも書類を復元しようと思えばできるわけだから、シュレッダーの裁断なんて、実は情報管理として大して安全とは言えないのである。

さて、弊部はキャビネットを1台だけ使っているのだが、その中に保管してある書類は何も ISMS やプライバシーマークの記録類だけではない。それ以外の印刷物や帳票をどうするかについても15秒ほど検討し、これは残すべき書類とそうでないものを仕分けすることとした。僕の予想として、電通や博報堂から配布された資料などの保管すべき印刷物や、受託案件の仕様書などを除けば、おおよそ 95% くらいは廃棄できると見込んだからだ。そして、実際に仕分けを始めると大半が廃棄してよいものだった。幾つかのシーケンス・ダイアグラムとか、要件定義書とかは参考のために残したが、広告代理店案件の UML 文書なんて別に後生大事に保管するようなものでもない。言ってみれば大企業の潤沢な予算を使ったプレゼンスやパブリシティだけを目的とする打ち上げ花火、しかも誰の記憶にも残らない刹那的享楽の成果を作り続けるのが広告の仕事であり、どれほど多くの人が共有していた CM のキャッチフレーズやギャグであろうと、ものの30年もすれば(YouTube などで過去のコマーシャルを観るのが好きだという変わり者を除けば)下の世代に全く通じなくなる。いや、それどころか広告の業界においてすら忘れられ、意外に制作のアイデアや技法が継承される芸術や美術や文学とは違って、制作時のノウハウもコンセプトも後の世代に継承・共有されずに終わる。言わば、広告業界の「クリエーティブ」というのは、実は過去の経験や知見や技術を殆ど知らない〈オモロイやつ〉が、たまたま受けることを属人的に繰り返しているだけなのである。なので、そんなことに関わる仕様書やら企画書やらシステム開発の文書を残したところで、人類の叡智や善く生きるすべに貢献できることなど欠片もない。何百年と人類の一部が繰り返してきた、まさに日本の「有名」哲学プロパーが毎月のように出版するクズのような本と同じく、暇潰しの産物にほかならない。

ということで、事業所を移転する際には弊部のキャビネットは廃棄してもらってもいいと決めて、キャスターの付いたラックだけを二つほどもらって、ラックの1段だけを使って書類を置いた。紙の枚数としては5,000枚くらいになるとは思うが、この程度なら管理する負担も少ない。そして、やはり同じことを繰り返すのもどうかと思うので、情報システム部という部署として正式に稼働し始めたことでもあるし、本年度から帳票の電子化に取り組むこととした。まずは、今年の末にプライバシーマークの更新監査があるため、既存の社内規程や帳票を見直すことから始めている。もとより、リモート・ワークがスタンダートな働き方となり、当社でも既に就業規則を改定して週に1日や2日だけ必要に応じて出社すればいいという体制になっているため、情報資産とりわけ個人データの扱いにも多くの(スキャンした書類データをクラウド・ストレージに保管するか電子契約が標準となり、紙の書類は二次的な扱いとなる)変更がある。こうなってくると、スキャンするのが面倒臭いという悩みも、最初からオンライン・サービスを使って電子契約が当たり前になれば、過去の問題となってしまうのだろう。

だが、既存の書類や文書や書籍については、Google や Internet Archive がせっせと毎日のようにスキャンしているものの、依然として手つかずのリソースは大量に存在している。僕の手元には図書館から借りてきた『座談会 大阪の戦災復興 その一』という役所が作成した冊子があるのだけれど、僕が興味をもって調べながら MarkupDancing に記事を書き足している船場センタービルに関わる資料として、これを手元に置いておくにはどうするかを考えると、やはりコンビニエンス・ストアでコピーするのが手っ取り早いと感じてしまう。1ページずつスマートフォンで撮影して歪み補正した写真を PDF に保存するのは面倒だし、自宅のプリンタ(スキャナ)でスキャンするのも煩わしいからだ。自宅のプリンタでスキャンするのとコンビニエンス・ストアでコピーするのとで違いがあるのかと訝しく思うかもしれないが、家庭用のプリンタは B4 を見開きで処理できる大きさではないし、スキャンのスピードも遅い。それに、コピー機のように手軽に扱えるような場所に置いていないことも多々あるため、気軽にできるようでできない。

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