Scribble at 2020-12-24 09:24:58 Last modified: unmodified

朝の 7:45 から NHK では地方局の報道内容を放映していて、関西を担当する大阪放送局は毎週の木曜日に竹原という人物が中小企業をリポートしている。当社も、竹原氏がホストを務めるラジオ番組で代表をゲストとして迎えていただいたことがある。今日はワイヤーを製造している会社が紹介されていた。商品開発の話が中心なので、多くの方は「工夫して色々なワイヤーを作ってるな」としか思わないかもしれないが、財務の知識や関心があれば相当に厳しい経営だと分かる筈だ。

年商1.5億円。これがそのワイヤー工場のスペックである。財務的には、どんなに良い商品をどれくらい作っているかは、実のところ重要ではない。どれくらいのコストをかけて、どれくらいの実入りがあるのかという、金の出入りだけが重要である。単純に算出するだけでも、1.5億円の売上ということは、原価、法人税や人件費や光熱費、各種の社会保険料といった販売管理費などを差し引くと、製造業に分類される中小零細企業の利益率はだいたい 3% ていどとされている(経済産業省『商工業実態基本調査』)ので、営業利益は450万円。ここから金融機関への利息支払いなどを引いたら、いわゆる経常利益はたいして残らないだろう。

そして、番組では社員数が20名と紹介されていた。本来、会社法で「社員」とは出資者(株主)のことなのだが、ここでは従業員と役員の意味として考えておくと、製造業に従事する中小零細企業の労働分配率は80%近くあり、製造原価率は40%ていどとされているため、だいたいの計算で8,000万円くらいが人件費だと思えばいい。これを20名で(社長も含めて)均等に割っても、一人当たりで400万円だ。当然だが、これがこのまま各人の銀行口座に振り込まれたりはしない。実際には退職金の積み立てだの持株会だの社内の親睦会費だのと色々な雑費が差し引かれるし、もちろんだが源泉所得税(法人として払う税金は販売管理費に入るが、従業員個人の住民税などは一時的に徴収している「負債」扱いとなる)を引いて、実際の手取りは350万円もあればいいところだろう。ここから、まさか役員や工場長が他の従業員と同じ年収というのは考えにくいので、実際には社長などの役員報酬は費目として別扱いになるのだが、単純に他の社員から一律に差額を差し引くと、従業員の平均した手取りは300万円ていどと考えられる。ボーナスがなくて単純に月割りにすると、25万円だ。恐らく、共働きでなければ子供を養える家計にはならないだろう。

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