Scribble at 2020-12-14 11:37:10 Last modified: unmodified

アマゾンの洋書はだんだん酷い有様になってきている。最初は、素人あるいは何の伝手で大学教員になったのか知らないが無能なプロパーが自費出版の電子書籍をばら撒くだけだったのだが、何年か前から KDP (Kindle Direct Publishing) に加えてオンデマンドの印刷・製本をアマゾンが代行するようになってからというもの、表紙に適当なイラストを貼り付けただけの "notebook" やら "journal" という単なるメモ帳を "paperback" と称して大量に新刊書籍として登録する連中が出てきた。これは既に何年か前に BBC が報道したように、テロ組織や経済ヤクザや宗教カルトのマネーロンダリングだと言われていたのだが、現在は既存のヤクザと無関係に発生するオレオレ詐欺グループなどにも利用されているらしく、必ずしも公安や警察の掴んでいる情報だけではカバーしきれないところからの出品もあるらしい。これは、見たところアマゾンでは全く何の対応もしていないように思える。《書籍として出品する商品》のタイトルに "notebook" のような語句を使えないようにするといった対応すらしていないため、いまのところは検索キーワードに exclusion として "-" が使えるようなので、"-notebook -logbook -journal -independent" などとしているが、そういうことに対抗するためか、今年に入って特に増えてきたのが英語以外の言語で "Notizbuch" などとタイトルをつける事例だ。それ以外にも、これまでは素人が PHP や Ruby のようなプログラミング言語の解説書を1,000円くらいで出品していた事例は数多くがあったのだが、ここに来て値段設定が16万円とか異様な事例も増えてきている。

このようなわけで、漫然と "PHP" というキーワードだけで洋書を検索して、最新の刊行物から並べるというソートで商品一覧を表示すると、まともな著者、まともな出版社、そしてまともな内容と思われる著作物が、100件に1件ていどしか出てこない。まったくもってカオスである。そして、既に経験されている方も多いとは思うが、哲学の洋書でも状況は似たようなものだ。特に哲学の洋書で多いのは、ウィキペディアのページをそのまま PDF として出力したものを電子書籍として販売している事例だ。確かに、ウィキペディアのライセンス(CC-BY-SA 3.0)に従っている限りでは適法だが、法律に反せず権利の侵害ではないからといって、同じ内容のコピペ電子書籍が何種類も(しかも値段が数百円から数万円までバラバラで)ばら撒かれている状態は、一物一価といった《市場経済的な正義》に反する。

現在のところ、対抗手段は少ない。アマゾンを利用せずに丸善や紀伊國屋でレートの高い洋書が買える境遇なら好きにすればいいが、たいていのアマチュアにそういう選択肢はない。請求金額も見ないでワンクリックで数万円の洋書を次々と注文しては(公費ではなく私費で)一か月に数百万も使うといった事例もあるにはあるが(関大時代の先輩にそういう方がいたと何度か言及したことがあるし、別に反感を持っているわけでもなんでもなく、本当にそういう人はいるのだ。というか、出身高校の同級には医者の子息が多かったので、医学系の学生なら一か月の書籍代が数百万円なんて大して珍しいことでもないらしい)、プロパーであってもそんな境遇にはないだろう。よって、せいぜい上記のように検索キーワードを工夫するか、あるいは目当ての本があればタイトルを正確に検索するくらいしか手がない。

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