Scribble at 2020-11-25 18:08:13 Last modified: 2020-11-25 18:14:45

しばしば水を差すようなことを書くので、わざとなのかと思われるかもしれないが、しかし実際に宣伝されたり話題になるほどの効果があるのか疑わしい活動というのは、それこそ昔から色々な国や場所にある。現代で言えば、それらの一つが「MOOC」だ。

当初から、有名大学の MOOC は「おこぼれ」だった説というのがある。つまり、MOOC として無料の動画やシラバスをばらまくだけで、高等教育機関への(進学や投資や尊敬という)モチベーションだけ引き上げられるわけだが、実は教育水準の底上げにはなっていないという報告がある。実際、MOOC で公開されているコースの動画を一から十まで全て通して聴講する人は多くないと言われている。大半が、「どんなものだろう」という冷やかしやつまみ食いであって、最初の数回の動画を眺めて《見切ってしまう》わけである。もちろん、そんな容易いわけがないけれど、得てして素人に限って思い込みに陥りやすいので、「こんな感じのテーマをこういう感じで考えるのか」と適当に把握してしまえば、後は何十時間にも及ぶ動画なんて観たくないという心境になるのは自然なことだ。そして、凡人が自分の《セカイ》内における認知可能な能力と範囲においてだけ理解している限り、それは最初から分かることを違う言葉で言い直しているにすぎず、すべては予定調和として回収されてしまう。そんなことで教育水準の向上になどなるわけがない。

これは知識の習得なり情報の取得という現実の行為を冷静に考え直せば、当たり前の話である。例えば、コンピュータ・サイエンスではまともな学生の大半が読む SICP(Structure and Interpretation of Computer Programs)を例にとると、このテキストを使って MIT が公開しているレクチャーの動画は、平均すると一節(1.2 とか 2.2 の単位)あたりで1時間の講義になっているのだが、これを書籍として読めば20~30ページであり、ネイティブの学生なら考えながら読んだとしても10分くらいで終えてしまうだろう。つまり、動画は動画として伝達する効果に特化したコンテンツにしない限り、知識や情報を伝達する手段としては文章よりも非効率なのである。「巨人はソフトバンクに4タテ食らった」と言えば数秒で済むものを、日本シリーズの中継動画を4試合分も観るのかという話だ。ちなみに、工藤監督は巨人で何年も試合に出ないで何億円ものタダ飯を食わせてもらったどころか恩を仇で返すという憎い奴だが、巨人にもこういう人材は必要だ。いまのところ期待できるのは、若いころから「腹黒」と言われてきた元木大介くらいのものだろう。

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