Scribble at 2020-09-19 19:41:26 Last modified: 2020-09-19 19:43:42
数日前に到着予定が急に変更となって、本日の午前中に Ernest Becker の The Denial of Death が郵便受けに入っていた。A5 版よりも少し小さいサイズの判型で、予想よりも小ぶりな本だ。何年か前に大阪市中央図書館で翻訳を借りたときは、かなり大部の書物だったため、原書もそれに見合うボリュームだと思っていたのだが、やはり日本語版の制作過程で起きやすいと言われている文章量の増加とか、解説などの追加による増量なのだろうか。1973年にアメリカの Free Press から出たのが初版で、このほど手に入れたものはイギリスの Souvenir Press というところが再販したリプリントである。もちろん、ベッカー当人は本書を出した直後に亡くなっているから、第二版どころか第二刷でもない。
何度か書いているが、このところ単に「コロナ禍」で死に至る場合がある感染症が流行していたからなのか、あるいは感染症だけが理由ではなく自殺願望の人が増えるほど景気も後退して治安も悪くなっているからか、とにかく死生観とか死ということに関わる本が書店で色々なところに並んでいる。もちろんフェアとして並ぶこともあるが、それ以外にも倫理学とか医学とか生物学とか美術とか社会保険とか色々な棚で何年も前に出た既刊の書籍ですら目立つように陳列しなおされているので、よほど引き合いがあるのか売れているのだろう。そして、死生観に関わる手ごろな本の筆頭は、もちろんキューブラー・ロスの文庫本だろうとは思うが、それ以外にもシェリー・ケーガンの講義録とか、ガワンデの『死すべき定め』とか、最近になって基本書と言えるような本が加わっている。だが、このベッカーの『死の拒絶』も、学術的にはともかく読み物としては定番と言っても良い本だろう。もっとも、日本では既に翻訳書が絶版となっているし、ベッカー本人についてもウィキペディアにエントリーすらないのは残念なことだ。