Scribble at 2020-09-18 18:47:17 Last modified: 2020-09-18 18:51:02
このテキストは専用のサイトで PDF が無料でダウンロードできるし、翻訳も可能な Creative Commons だから、国内の出版社が翻訳して出版してもいい("for any purpose, even commercially")。こういうテキストは英語だと相当な数に上っていて、はっきり言えば横のものを縦にする力量と人員さえ揃っていれば、数学ではかなりの分野でテキストを提供できると思う。哲学でも、たとえば何度か書いたと思うが、SEP のライセンス契約でもして、個々の項目を翻訳して哲学版の VSI みたいにシリーズで出版することは可能だろう(ライセンス料がどれくらいになるかによって現実に出版できるかどうか決まると思うが)。そういうことをやるだけでも、国内で毎年のようにばらまかれている、劣悪で、安っぽく、自己欺瞞として勝手に納得したり感動する人はいるだろうが、結局は人が生きたりものを考えるための礎になっているとは思えない、アンチョコやまとめサイトみたいに愚劣な読み物を一般の読者、とりわけ若者に提供するという欺瞞的なことをしなくてもよくなる(もちろん、そもそも学部卒の素人集団にすぎない編集者や出版社に、学術的な素養はおろか出版人としての矜持など消失しているのかもしれないが)。
ただ、先の記事で紹介した丸山氏が具体的に何について懸念しているかはわからないが(国内で食べている以上は具体的に書けないという事情もあろう。それに、なんといっても彼が言う「知の欺瞞」の日本での温床だったとも言えるような雑誌に書いているのだから)、上記のような理由で文化的なインフラが既に信用のできないところまで零落してしまっているという可能性はある。