Scribble at 2020-09-14 15:30:08 Last modified: 2020-09-15 23:42:46

美学は18世紀半ばに作られた哲学的学問であり,「感性」「芸術」「美」という主題が収斂するところに成立した.美学の古典といえるカント『判断力批判』(1790年)を題材にし,そこでの重要なテーマをめぐって,古代ギリシアから21世紀までの美学史を概説する.美学を深く学ぶための決定版.

美学

興味深い本なのだが、10年前に同じく東大出版会から発売された西洋美術史のテキストと100ページくらいしか分量が変わらないのに倍の値段になっている。下らない自己啓発本や《まとめ本》のようなものばかりが売れているからか、あるいは全体として低調なのか、どうも最近の人文系の本は単価が20年くらいで倍になっているような印象がある。東大出版会のサイトで新刊の一覧を眺めていると、5,000円を下回る方が珍しいという実態になっている。確かに、実家の資産と偏差値は連動するということだろう。(こういう金銭感覚の人たちがものを書いて出版しているということ。)

研究者の成果として専門書が出たり古典の翻訳が出るのは総論として歓迎するべきだが、概して1万円を超えるような価格設定の著作ばかりが景気変動と無関係に続々と出てくると、もちろん本当に読みたい人はスマートフォンでロクでもないゲームをしている暇があればバイトでもして金を作って買えばいいわけだが、それはやはりプロパー志望の学生や趣味的な社会人に限られるだろう。《まとめ本》を手にするような人たち、それでもそういう本をひとまずは手にするような人たちに読んでもらいたいはずの著作が、3巻セットで5万円とかしていたのでは、これまでと実情は変わらないだろう。つまり、しょせん哲学なんてものは、読まずにウィトゲンシュタインか隠れた天才思想家ごっこをする電波の暇潰しであるか、それとも逆にひと月の書籍代というか小遣いが数十万円を超える(先輩の中には、さらに桁が一つ大きい人もいた)資産家の次男坊がやるような、これまた暇潰しという世間的な印象は何も変わらない。

こういう実態があることを無視して "philosophy for everyone" なんて言ったところで、それはしょせん哲学という分野の成果を安く切り売りしたり、幼児が咀嚼しやすいように細断された成果を《施す》という、福祉活動か慈善事業でしかない。

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