Scribble at 2020-08-31 09:14:50 Last modified: 2020-08-31 09:25:04

創文社による既刊書は2020年3月をもちまして終売いたしました。以後既刊書のご購入を希望される方に対しては、東京大学出版会から「プリント・オンデマンド」版で販売いいたします。本年10月には既刊50冊(各巻予価7,000円~10,000円)の販売を開始する予定です。

『ハイデッガー全集』継続刊行と既刊書の販売について

約60年の歴史を終えて創文社が今年の6月に解散となった。数年前から事前告知されていたため、もちろんプロパーの多くはご存じだったと思うが(科学哲学だと創文社から出ている著作が少ないので、知らなかった人はいるかもしれない)、既刊書がどうなるのか、そしてとりわけ半分しか刊行が進んでいなかった「ハイデガー全集」はどうなるのかがわからなかったのだが、東京大学出版会が引き継ぐということで、ひとまず安心できる。

創文社と言えば、もちろん「ハイデガー全集」の何冊かは手元にあるが、それ以外にも松田先生(神戸大)が『ライプニッツの認識論』をここから出していたし、僕が学部時代に好きで読んでいたリーベリッヒの『ドイツ法制史概説』もあった。他にも中世哲学などで一読したい著作もあるし、ハイデガー全集でも続巻で目を通したいものがある。それにしても、東大出版会が引き継いでも年に3冊ていどの予定だから、全集が揃うのは早くても15年以上は先の話である。かようにして、人は死ぬまでの間に何かを(もちろん真剣に)考えるにあたって参考にしたい本があったとしても、それを現実には読めないという可能性がある。ドイツ語でハイデガー全集が読めるまでのレベルになる時間や能力が足りないとか、あるいは一冊10,000円くらいはするであろう訳書が買えない場合もあると思う(図書館ですぐに買うとは限らない)。それでも、人として何かを考えなくてはいけないと思えば、人は考えるし、考えてよい。それを、「これって、まだ訳されれてないけどドイツ語全集何巻の何ページに書いてあることだよね」などと哲学オタク風情が論評して何になるのかと思う。そういう意味での「プロパー」とか「アマチュア」というのは、哲学においてまったく不必要な存在だ。

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