Scribble at 2026-06-12 13:54:05 Last modified: 2026-06-12 13:54:14

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僕は英和辞典として長らく小学館の「プログレッシブ中辞典」を使ってきた。それこそ、1980年に登場した初版から何度か買い替えているくらいだから、それなりに熱心な愛用者の一人だと言えるはずだ。でも、最後に買ったのは2005年の第4版第3刷であって、その後で2012年に発売された第5版は買っていない。そして、それから10年以上が経過するのだけれど、もう次の版は出ないのだろうか。そもそも、この第5版がジュンク堂のような大型書店にすら置かれていないのだ。

もともと僕が中学生で「プログレッシブ英和中辞典」を手にした理由は、かなり子供じみたものであった。まず第一に、同級生の多くが研究社の辞典を使っていたからだ。誰もかれもが同じ出版社の同じ辞書を使うというのも面白くない話である(僕の母校では、英語の教師が辞書を指定も推薦もしなかったので、なおさらだ)。そして第二の理由は、中高生向けの「学習辞典」などというものが嫌だったからである。そういう、「子供向け」などとして設計されたような商品に侮蔑されたような気がするのは、かなり幼い頃からの性分であったらしい。

しかし、ご承知のとおり「プログレッシブ英和中辞典」の第5版は、セールス文句として「ビジネスパーソンのためのビジネスツール」などとうたうようになった。これが、第5版に手が伸びなかった理由である。そして、それから10年以上が経過するけれど、次の改定の話は聞かないし、それどころか書店から姿を消していく。やはり、いまどきああした一色刷りの質実剛健な辞書は子供どころか「ビジネスパーソン」とやらにも不評だったのだろうか。

既にいくつかの成果が出ていることをご承知の方もおられると思うが、辞書やテキストあるいはノートでも同じだが、色ペンやマーカーなどをあれこれと使ってカラフルな見栄えにしても、学習上の効果は殆どないというのが学習心理学の定説になりつつある。そして、これは僕が昔から単語帳を作るときにも、単語と訳語の対だけでは学習効果が低いと考えてきた理由と同じなのだ。つまり、書かれている文章に出てくる単語だとか考え方などを理解して記憶するためには、前後の文脈なり脈絡という関連した情報がセットになっていないと、それが重要であり覚える必要があることだという説得力が自分の脳に伝わらないので、脳は覚えようとしないのだ。よって、 "cat / 猫" なんていうセットを単語帳に延々と書いていくよりも、"A white cat was sleeping by my side at that morning." などという情景の中で単語を使う方が印象に残り、それはつまり記憶として残ることでもある(なぜなら、"cat" が何であるかを知らなければ文の意味が分からないので、どうしても "cat" が何なのかに脳は関心を持とうとするからだ。この、興味をもつという志向性が記憶を助けるのである)。

ともあれ、そろそろ英和辞典を買い替える時期でもある。辞典は、やはりなるべく新しいものを使った方がいいからだ。改訂版だからというだけではなく、新語の収録だとか、僕が持っている2005年の辞書だと20年も前の辞書だから、微妙にニュアンスが変わっていたりズレていたり、あるいは派生的な意味が増えている単語もあるはずだからだ。もちろん、自分が知っている単語を全てフォロー・アップできる人なんていないわけだが、少なくとも同じ辞書を使い続けていればフォロー・アップするチャンスそのものを手にすることができない。そして、これをオンラインの辞典サイトや生成 AI の自動翻訳だけに任せていてはいけないのである。なので、このところ出社したときにジュンク堂へ足を延ばしたら、必ず辞書のコーナーには立ち寄っているのだけれど、いまのところ眺めている辞書にはどれも決定打がない。

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