Scribble at 2026-07-14 10:19:34 Last modified: 2026-07-14 10:24:40

僕は、6月から弊社の CAIO (Chief AI Officer) を拝命しているのだが、最初に全社を対象としたチャットで幾つかの方針を表明し、そしてそれを解説するメディアも配信した。そこでは、もちろん EU の AI Act などに代表されるような human-centric な運用についても言及してあるし、実務上の問題としても AI に極端に依存することは危険であると述べてある。

実際、僕は2023年の6月から生成 AI をローカル・マシンで使っているのだが、拡散モデルをリリースしている各社によって、それから同じ会社でも次々に開発されるアーキテクチャーによって、実は有効なプロンプトのフォーマットだとかキーワードの扱いが異なる。これは、キーワードごと、それからキーワードの組み合わせ方について、モデルごとにウェイトが違っているからだし、アーキテクチャーが(新旧や優劣というよりも単に)違っていれば、同一のキーワードについて同じウェイトが定義されていても、それを処理する仕組みも異なるからだ。生成 AI モデルの実体はテンソルと呼ばれる膨大な数値の一式なのだが、その組み合わせや配置には、それこそ膨大なパターンがありえる。

これはつまり、拡散モデルごとに有効なプロンプトの組み方があるということであって、それは公式なドキュメントだけでは十分に分からない場合がある。なので、実際に特定のモデルを使って試行錯誤を積み重ねている人々が「プロンプト・エンジニア」として一定の職能として認められるのは構わないし、その知見や技能に見合う報酬を得るのは当然だと思う。しかし、彼らを見分けたり評価するためには、僕ら発注する側が最低限の知見をもっていなくてはいけないのだ。

これもまた、僕がウェブの制作業界について20年近くも述べてきた話と同じである。自分が無知なままでも、誰がか(金銭と引き換えでも)助けてくれるなどという甘い想定で事業や仕事に取り組むことほど愚かな態度はない(もちろん、だからといって誰もかれもが詐欺師やチンピラ起業家やインチキなセミナー講師やヘタレ SE 崩れだと言っているわけではない)。そういう愚かな態度で他人の善意に期待し、期待に見合わない事業者や部下を次から次へと切り捨てても食っていけるのは、それなりに身分が保証されている官公庁の国家官僚や大企業と上場企業のサラリーマンだけである。

ということなので、これからますます AI を活用するサービスが増えてくるとは思うが、それらのサービスでは、各社で(追加の)トレーニングを実施したモデルを使ってサービスを提供するのであるから、サービスごとに有効なプロンプトは異なるであろう。そのためのベンダーに特化した(つまり囲い込まれる)検定や資格なども出来てくるだろう。現に AWS や GCP や Azure では、自社の AI に特化した技能を求めている。そのうち、Salesforce やキントーンや「さくらのクラウド」でも似たようなことになるはずだ(ここでも繰り返しておくが、平仮名やカタカナの社名は直前の接続詞などとトークンとして分別し辛いので、僕は敢えて括弧に入れている。強調する意図はない)。すると、これはこれでロック・インすることになるので、単に AI へ依存するというだけではなく、特定のモデルの仕様に依存するということにもなる。これは、一般企業なら仕方ないとしても、弊社のようなネット・ベンチャーを名乗っている企業においてはヘタレの自己紹介のようなものだ。そのサービスでしか仕事ができませんと言っているようなものだからである。そして、パソコンがないと仕事にならないというのは分かるとしても、まだ AI がないと仕事ができないとまで顧客や同僚や上司に言い訳できるわけではない。しかし、これもご存じのように、このところ Gemini や ChatGPT などのレスポンスが低下してきており、頻繁にタイムアウトして回答を出さないという問題が起きている。これは、たとえ僕のように有償のプランで利用しているユーザでも直面している問題であり、これは生成 AI に加えてクラウドという仕組みの脆弱性でもある。こういう脆弱性に対応したり対抗できるスキルや手立てをもっていなければ、とてもネット・ベンチャーの社員、あるいはネット・ベンチャーを運営する事業者としてまともとは言えないであろう。

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