Scribble at 2025-11-06 20:35:20 Last modified: 2025-11-15 10:03:38
GEB の著者であるダグラス・R・ホフスタッターは、どんな読者を望んでいるかという問いに「15歳くらいの頭がいい連中」だと答えている。これは、一見すると「馬鹿な一般人は眼中にない」という、アメリカの学者にありがちなサイコパスの発言に見えるが、そこまで悪質ではないと思う。せいぜい無自覚な軽口なのであろう。そして、僕は学術に関してトリクル・ダウンのモデルを支持しているので、先に業績をあげた人々が、自分たちの若い頃に読んでいたらと思えるような本を書いて、後進の若者たちにとっての crane であろうとすることは、一般論としては望ましいことだと思う。有能な人間は、有能な人の相手だけしていればいいのだ。どこかの文化後進国のように、女子高生やビキニ・アーマーの幼女が表紙に描かれたような入門書を大学教授が書く必要なんてないのである(もちろん、本当にそんな本ばかりだと言いたいわけではなく、そういうものに準じた俗書の話をしている)。凡人が通俗本を何冊か読んだだけで、自分にとって学問や知識がどういう意義をもつのかを考えるきっかけになるなどと期待することは、それこそ crane に対する skyhook のようなオカルトであろう。そして、一般向けには skyhook ではなく、ちゃんと crane の役割を担うプロダクトを制作する仕事こそ、科学ライターなどの専門職を養成して担ってもらうことが望ましいと思う。結局、独立研究者だのライターだのと出版業界が長年にわたって自分たちの基準を打ち立てることなく手抜きしたり、書き手を育てたり指導せずに甘やかしてきたせいで、著述の素人である大学教員が教科書や通俗本を書いたり、著述のプロであるべきライターが WELQ バイトの学生や主婦みたいなクズ文章しか書けなくなっているのだ。