Scribble at 2025-10-07 20:20:07 Last modified: unmodified
どうして、人を増やせば売上が伸びると思い込んでしまう経営者が多いのかという疑問は、昔からある。とりわけ弊社だけではなく、これまでに勤めてきたいくつかの会社で、たいていの経営者や人事は同じような思い込みを抱えていた。しかるに、財務上のリスクが少ないと判断すれば、まず真っ先に人を採用しようとするのだ。なにも、人手が不足していて残業が増えて困るといった不満がなくても、やたらと人を増やす。それは、ひとえに人が増えたら売上が伸びると思い込んでいるからに他ならない。
しかし、たいていの企業では、そういう安易な採用など失敗するのだ。
その「失敗」の第一は、会社の金を浪費することだ。まず、採用するまでに一定のコストがかかり、人材紹介会社などを頼ると年収の何割かを払うので、それだけ数百万円の出費になる。数カ月で辞めることになる、カスみたいなやつを紹介されてもだ。そして、人事担当者はともかく、配属先の部門長が採用までに何人もの応募者と面接するのだから、それだけで工数を使う。そうして採用した後に、当たり前だが研修や実地訓練や上長への同行など、最低でも数カ月は試用期間として売上に貢献しない期間がある。よく、「即戦力」などという寝言を口にする者がいるけれど、そんな人間は(少なくともベンチャー企業には)いるはずがない。ベンチャーというのは、それぞれ特別な商材をもって市場に挑んでいるわけなので、どこに就職したり転職しようと、初めて扱う商材に決まっている。「それ、前の会社でも売ってました」などと、鉛筆を売るような感覚で同じことをすればいいなどと口先だけの手練手管で営業ができると思っているようなやつらは、どのみち詐欺師であろう。そのうち会社に重大な被害をもたらす可能性がある(業績を水増しするために、ただの口約束を計上したり、知人の名前を勝手に使ったりする。そうして、ノルマを達成した後に仕方のない理由をでっち上げて失注にする)ので、そんなのは採用しないに越したことはないが、採用した後でも人事考課をはじめとする色々な理由をつけてバスから降りてもらう方がよい。ベンチャー企業は財務的に厳しい状況で経営されていることが多く、馬鹿や詐欺師を雇い続ける余裕などない。
ともかく、使い物になるまでのあいだ、上長をはじめとして社員の工数が教育やアドバイスなどに使われるのだから、彼らの売上も下がる。そして、その教育期間のあいだ下がった売上を、その新人が(自分に割り当てられた売上の目標も加算して)カバーできるかと言えば、そんなことはありえないのである。であれば、人を増やせば必ず無駄な工数を浪費することになるのかというと、そうではない。もともと、部門長も含めた全員に、新入社員に限らず、誰かをカバーできる工数の余裕を作っておけばよいのだ。それは、なにも新人の研修だけに使うとは限らず、同僚が親の介護で休むとか、癌で手術するとか、いや推しのコンサートに行くという事情でもいい。誰かのカバーをしても超過労働にならないような体制をつくっておけばよいのである。そして、実はそういう体制を作るためにファイナンスの余裕を維持することも、会社を上場して資金を集める一つの理由なのだ。