Scribble at 2022-07-05 10:23:01 Last modified: 2022-07-05 10:38:35

僕は関西大学大学院の修士課程(博士課程前期課程)に在籍していた頃、大学の千里山中央図書館で地下の書庫や自習室を利用するための特別なカードを交付されていたので、大学へ行く機会があれば朝から夕方まで籠って地下の書庫で過ごすこともあった。書庫から這い出てきて学食で夕飯をとって帰ろうとすると、たまたま学食の近くで岸(政彦)さんが演奏の練習をしていたこともあった。

ちなみに、大学から阪急電車の路線に沿って豊津まで南下してから糸田川に沿って南西へ進むと豊津中学があり、この付近にあった補習塾で理科の講師をしていたことがあったため、大学で夕方まで過ごしてから塾へ出勤していたこともある。また、塾の講師を辞めた後は蛍池にある第一パンの食パン課で仕分けや食パンの包装を担当するアルバイトに行っていたこともあり、それは逆にバイトが終わった早朝に蛍池から関大まで 9km ほどの道のりを歩いて「登校」していたこともある。ただ、竹尾先生には申し訳ないことに、大学に着いたら演習が始まるまでのあいだ、よく図書館の書庫で寝ていて演習を休んでしまうこともあった。

さて、話は書庫での過ごし方である。あまりこんなことをする人はいないかもしれないが、幸いにして関大では数多くの雑誌を(バックナンバーの収集も含めて)購読してくれていたので、現代の英米哲学に関する主な雑誌は Philosophical Studies や Canadian Journal of Philosophy など一部の例外を除いて、おおよそ千里山中央図書館でバックナンバーが読めた。なので、Analysis だろうと BJPS だろうと第1巻から収められていたから、バックナンバーを第1巻から片っ端に眺めて行って、興味深い論文は手当たり次第にコピーするということをやっていた。神戸大学のように大学院生に年間で一定枚数のコピーが無償で提供されるという制度はなかったから、1枚10円のコピーを取るわけである。借りて読むよりもコピーして返却日を気にせずに読む方が好みだったから、雑誌だけでなく単行本も含めて大量のコピーを取っていた。コピーの費用だけで1か月分の講師代(5万円ほど)が吹き飛んでしまうことすらあった。もちろん、いまなら学生は subscription for institutions の恩恵に浴してパソコンから好き勝手に全ての論文へアクセスできるし検索もできるわけなので、いちいちコピーをとる必要などないだろう。ただし、PDF でダウンロードするなら、それなりに整理の仕方を考えておかないと、結局は積読と同じことになる。

また、印刷物としての雑誌のバックナンバーを渉猟するときに気を付けたいのは(恐らくオンラインで雑誌のバックナンバーを眺めているときも同じだろうと思うが)、必ず昇順に追ってゆかないといけないということだ。その理由は、特に第二次大戦前のナンバーを見ているとわかると思うが、"Reply to Mr. Robinson" といったタイトルが多く、何の議論についてディスカッションしようとしているのかまるでわからないからだ。かといって、もしかすると関心あるテーマについての反論かもしれないなどと、いちいち本文を一つずつ見てゆくわけにもいかないので、とりあえずなどと保存してしまうと、こんなタイトルの短い論説はいくらでも出てくるから、そのうち何についての reply だったのかも分からなくなる。ちゃんと創刊号から昇順に追っていけば、5年後に5年前の論説について取り上げる人は殆どいないため、たいていは1年か2年の間で reply が何についてのものかが分かるため、読む必要があるかどうか決めやすい。それに、こういう作業を途中で止めるときに、もしバックナンバーを降順に遡って見ているなら、"reply to" のようなタイトルだけを覚えておくというのは、なかなか大変である。それに比べて、そういう論説が相手にしている方の論文なら、ちゃんと何を論じるかテーマが書かれているので覚えておきやすい。

しかし、こういうこともメタ情報をさらに整理するようなサービス(例えば reply の応酬を一定の「スレッド」としてまとめてくれるような)が出てくれば、もう少し楽になるのだろう。でも、ここで注意しないといけないのは、そういう論文や discussion を使った応酬が同じ雑誌だけで展開されるとは限らないということだ。The Journal of Philosophy に掲載された論文について ERKENNTNIS で反論が掲載されることだってありうるし、もっと言えば Mind に掲載された論文について Boston Studies のようなアンソロジーに反論が掲載されることだってあろう。

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