Scribble at 2022-03-07 10:13:06 Last modified: unmodified
いまのところ、メタバースって言っても企業ごとに単発の「セカンドライフ」をやってるにすぎないわけで、これをどうやって連携するかというプラットフォーム競争をやってるわけである。
正直、ここで数学や工学のレベルで戦えない企業は、どこまで行っても「IT のユーザ」であり、市場をコントロールする側にはなれない(いまだに日本では「ITベンチャー」と「ネット・ベンチャー」の違いを理解しない人が多いわけだが)。アバターのクリエーティブなんてどうでもいいのだ。既にゲームを見れば、メタバースと叫んでいる事業者が提供するアバターの品質なんて既にどうでもいいことが子供でも分かるからだ。ゲームで活動する「職人」の多くは、もう広告代理店のプロのデザイナーなど歯牙にもかけないレベルでキャラを続々と世界中で作ってるわけであり、そして彼らのノウハウも「つべ」や各種の SNS で共有されていて、遅かれ早かれメタバースで利用できる建物や設備や物品やアバターの制作を広告代理店はおろかデザイン会社へいちいち発注なんてする企業はなくなるだろう。なぜなら、そういうノウハウがオープンで広まると、自動でカスタマイズできるツールが登場したり、最初から幾つかのパラメータを指定すれば最適化してくれるような機能が実装されるからだ。デザイン全般に言えることだが、デザイナーはクライアントを「説得」したり「教育」することはできない。クライアントから見てデザインの良しあしは、彼ら自身が美大出身でもなければ何らかのセンスをもっているわけでもない以上、判断する時点での全くの主観なり偏見なり思い込みによるのであって、主観や偏見で判断することの是非をデザイナーや広告代理店という立場で「程度が低い」だの「俺たちが本当の美を教えてやる」などと言えるものではないからだ。デザインは、経済合理性をはじめとするデザイン以外の事情に絶対に負けるのである。そして、デザイナーの一人として言わせてもらうが、その方が実は〈良いこと〉だったりするのだ。
もちろん、メッセージングの通信規格というだけでなく、サービスを提供する IaaS という意味でもプラットフォーム競争をやってる。でも、いまのところは MMORPG が単発であれこれと出てるのと、やってることは変わらない。いまどこかのサービスに入っておけば、後から通信規格が決まってほかのサービスとも連携するようになってサービスどうしで行き来できるようになるのかもしれないが、さてはて本当にそんなことが起きるだろうか。
これ、やろうと思えばゲーム業界でも既にできてた筈なんだよね。特に同じ会社のシリーズとして出してるゲームなら、次世代のゲームにアバターを引き継ぐという仕方でやれたはずなんだけど、どこのゲーム会社もやらない。なぜなら、アバターのカスタマイズにかかる洋服代とか染色代とかペット代を課金アイテムとして販売することがゲームの集金システムでもあるわけなので、自社のシリーズでアバターの引継ぎをやると集金のチャンスを自分で手放すことになる。なので、ゲーム会社は絶対にそんな仕様を認めない。
仮にメタバースが一社独占のサービスではなく、複数の事業者が連携する強いインセンティブがあるという仮定を置くと(逆に連携しないと、メタバースという事業そのものの価値が大きく損なわれると仮定する)、メタバースのサービス事業者どうしの連携を可能にするには、各事業者で用意するサーバなりネットワークなりというプラットフォームが一定以上のパフォーマンスを持たなくてはいけない。Meta で作ったアバターを正しく動かしたり表示するために必要なサーバのスペックを Microsoft が用意できなければ、いくら連携すると言っても Microsoft の用意したメタバースではアバターの洋服が見えなくなったり、Meta ではやれたことができなかったりすることになるからだ。
でも、そんな画一性をメタバースに参加する事業者が共通に確保したり保証しなくてはいけないとすると、これは簡単に言えば巨大資本によって簡単にスペック競争が始まり、そして同時にそれは簡単な参入障壁となる。要するに、インターネット上にもう一つのネットワークを作ることになるわけだけど、その利便性って自キャラを動かしてチャットしたり買い物できる以外に何があるんだろう。別に、アバターの外見をカスタマイズできるくらいで当人の外見が〈良く〉なるわけでもないし、アバターを使って商談できるとしても、アバターの向こうにいる連中がビジネスマンとして有能になるわけでもなんでもない。
それゆえ、そのような事情が分かっているのかどうか知らないが、一部の事業者は「AI」というキーワードを繰り返すわけである。つまり、アバターでやりとりするのだから、「中の人」が本人である必要もなければ、本人の能力だけでレスポンスを返す必要もないということらしい。したがって、「中の人」ができないことを代行する「AI」とやらが、当人に代わってレスを返したり、簡単なものであれば成果物を納品すらするというわけである。クライアントに API のパラメータと実質的に同じことを注文してもらえれば、それに応じた結果を自動で生成して返すことはできよう。
でも、これにしてもメタバースいるか? なんでアバター越しでなければ、そんなことすらできないと思い込んだりセールスしようとするのか。もちろん、セールスする側にとっては売り物になるなら何でもいいという事情があるのはわかる。しかし、デジタル・ネイティブだの何のと言われてリテラシーがあると言われていながら、この程度のカラクリに気づかない「層」がいまだに多いと見込まれているからこそビジネスになるのだろう。そういう「層」が、リテラシーのある世代に入れ替わるまでに売り逃げできるチャンスなのかもしれないが、恐らくそんな「リテラシーのある世代」なんて存在しないのだろう。したがって、この手のマーケティングは或るていどは続けられると僕は思う。