Scribble at 2022-01-20 13:29:25 Last modified: 2022-01-20 14:10:10
Ignored long enough, the lie becomes canon.
まず最初に書いておくと、昨年の暮れに生物学者の E・O・ウィルソンが亡くなった。彼は生物学者としてはアリの研究に始まり、やがて〈分子生物学というセントラルドグマ〉(分子生物学「における」ではなく)に反対して生態学の研究に進むこととなった。そうして、「社会生物学論争」として知られるようになった、科学と人種差別に関する騒動に巻き込まれ、後年はほとんど科学者としてよりも多様性に関する教育者や啓発家としての著作でしか知られていない。
そうして、Scientific American に掲載されたウィルソンに対する批評をめぐって、上記のように「公開書簡」を掲げる科学者が出てきたというわけである。もちろん、ウィルソンは nature vs. nurture なんて二分法の中でゼロ・サム・ゲームなんてしてはいない。文化も人の生き方や考え方や行動に影響を〈与える〉が、それには限界があると言っているだけであって、遺伝や生化学的な条件だけがヒトの何たるかを〈決定する〉なんて言ってはいないのだ。したがって、僕も Scientific American に掲載された批評は、酷いレベルの左翼コメント、あるいはイージーな cancel culture の一例でしかないと思う。
こういう状況を前にして、上記の公開書簡の著者は SNS でも意見を募ったようだが、黙殺すればいいだけだという意見に対して、"Ignored long enough, the lie becomes canon." だから反論を公表しておかなくてはいけないという。僕も同感だ。当サイトではバカを罵倒するのはやめると書いたが、やはりどこかに書いておかないと、イージーに知識や成果の〈おいしいところ〉だけを摘み食いしたいという愚かな人々に本を売ったり、表面的に教育者のフリをして政府のなんとか委員になりがたる愚劣な哲学プロパーや物書きは、僕に言わせれば哲学どころか真の啓蒙に対する反動勢力と言ってよい。それゆえ、MarkupDancing の方では僕なりの義侠心にもとづいて批評し続けるわけである。