Scribble at 2021-08-05 19:54:50 Last modified: unmodified

しかし、現実のフランスで、フランス語で何かを発信する時にAcadémie françaiseの最新の辞典を座右の書とし典拠とする人は、新聞記者にも、小説家にも、哲学科教師(*)にも、フランス語を専門とする言語学者にも、先ずいないはずです。私企業のいくつかの出版社の出している仏仏辞典のほうが、定評もあり、採録語彙も遥かに豊富で、役に立つのです。

(*) ここで「哲学」と書いたのは、フランス語の「philosophie」の「仏和辞典による翻訳」です。実態は、「論文作成術」「議論術」のことです。高校の授業の科目にもなっています。だから「哲学科教師」は、高校があるくらいの規模の町には必ずいます。

「ひろゆき」の妄想世界には「フランス語の単語の定義を決める機関」がある!

そういや一部のプロパーや物書きが、「フランスは高校で哲学の授業をしている」とか紹介していることがあるんだよね。でも、上記の小島剛一氏による具体的な説明が正確に伝えているように、実際にはフランスの高校生が学んでいるのは、いわゆる critical thinking や修辞学を取り入れた授業の類だ。

「哲学の授業」などという雑な表現を使うと、「フランスでは高校生でも15歳や16歳でデリダやベルクソンを読んでいるのか、さすがだな! 日本でも高校に取り入れて、『ことばと対象』や『内的時間意識の現象学』をテキストにするべき」といった与太話を始める学部生などが出てきかねない。しかし、実態は日本で言えばおおよそ現代文の小論文対策といった類のものか、せいぜい NHK の東大学卒職員が大好きなサンデルの「白熱教室」みたいな、ホーム・ルームに毛が生えた程度のディベート授業である。

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