Scribble at 2019-04-02 20:21:05 Last modified: 2019-04-02 20:24:45

さきほど『意識はいつ生まれるのか』について酷評はしたが、この本は意識に関する最近の議論のトレンドとしてご存知の方も多くなった、脳内で起きる複合的な作用というアイデアの先鞭をつけたという点では、評価していいのかもしれない。ただ、原著が出てから翻訳が出るまで10年以上のズレがあって、最近の同じような主旨の本と同時期に出てしまったのが不運だと言える。もうそれこそ最近では、意識が脳の中で起きる複合的な現象の組み合わせや副作用「にすぎない」という、デネット的なシニカルさを伴うアイデアというのは、はっきり言って見飽きた感すらある。もう、そんなアイデアだけの脳科学や認知科学の本など、原著だろうと翻訳だろうと論文だろうと必要ないだろう。後は、その証拠を固めることと、「そうだとすれば何が言えるのか、何が出来るのか」を提案する段階に移るべきである(もちろん、いつものようにアップロードがどうとかいう御伽噺にすぐ飛びつくのはやめてもらいたいが)。

とは言え、理屈を更に厳密かつ精緻にすることも、確かに必要なのだろう。でないと、この議論は簡単に開いてしまう、つまり関係のないものまで引きずり込むお手軽ホーリズムになりやすいからだ。たとえば、日本でもバカが「環境説」などと称して、意識は外部環境を含めた全体だなどという議論をしてきたし、そうでなくても現象学者の一部は所定どおりに肉体フェチの議論をし続けるだろう。

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