Scribble at 2026-10-01 07:57:59 Last modified: unmodified

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いわゆるビジネス系のメディアやSNSでは、何の実績があるのかも分からない、というか企業勤めの経験があるかどうかすら分からないようなライターや学生が「プロンプト1発でスライド作成」だの「企画書を数秒で自動生成する神ツール」といった手軽な小手先のノウハウをコピペ記事やコタツ記事として乱造している。まったく、AI にも劣るような知性の持ち主のやることは、まさしく皮肉な意味で既に「ギュラれている」のであろう。

率直に言って、こうした記事の殆どは読むに値しない。理由は極めて単純である。書かれていることのすべてが「いかに手抜きをするか」という表面的なノウハウに終始しており、「それによって空いた時間で、人間は一体何をすべきなのか」という、本来なら最も重要であるはずの問いが完全に抜け落ちているからだ。なぜメディアがこのように劣悪な記事ばかりを垂れ流すのかといえば、理由は分かりきっている。「コピペで資料ができる」という話は参入障壁が低く、凡人や無能の興味をひきやすいからだ。一方で、浮いた認知資源を投じて、人間が何を担うべきかを真面目に論じようとすれば、個々の事業戦略の妥当性や、組織の力学、さらには意思決定に伴う不確実性と責任の引き受け方といった、極めて個別的で泥臭い議論に踏み込まざるを得なくなる。それは手軽に一般化できるライフ・ハックにはならないので、安直なPV稼ぎを目論むメディアにとっては商売にならないのだ。その結果として起きているのは、「手抜きをして浮いた時間で、また別の手抜き作業をこなす」という、手段の自己目的化としか言いようのない不毛なサイクルであり、要するに仕事と称する AI 遊びにすぎない。

こうした指摘をすると、決まって「作業はAIに任せて、人間はよりクリエイティブな仕事や意思決定に集中すればいい」といった、もっともらしい反論が返ってくる。しかし、僕に言わせれば、そうした物言いもまたメディアの紋切り型の標語と何ら変わらない。なぜなら、たいていの人間つまり凡人にクリエーティビティなんて最初からあるわけないからだ。勉強も、思考も、修練もしないで、なんで AI サービスを使うというだけで凡人に創造性が都合よく備わると思えるのか。現実の人生や世界は、ラノベの転生アニメとは絶対に違う。作業が自動化された結果として、人間側にシフトしなければならない負荷と役割は、曖昧な「クリエイティビティ」などではなく、以下の3点に集約されるだろう。

(1) AIは、与えられた入力で統計的に「いい感じ」の出力を計算することには長けている。しかし、「そもそも解くべき課題は何なのか」とか、「与えられた前提条件そのものが破綻していないか」を自ら疑うことは構造的に不可能である。これまで多くの勤め人は、スライドの体裁を整えたり、企画書の体裁を繕うといった、個々の会社で推奨される枠組みの中で型に従う作業へ大半の時間を費やしてきた。そうした作業が削ぎ落とされたいま、人間が向き合うべきは、何が真の論点であるかを冷徹に観察し、問いの枠組みそのものを構築する作業である。いわゆる DX 化にも言えることだが、外部のサービスやツールを社内の業務に適用させることによって、逆に社内の不合理なルールや非生産的な慣習を壊すという利点がある。

(2) AIの成果は、訓練データに基づく統計的なパターン認識の産物にすぎない。そこには、組織内の暗黙の力学や、現場の人間関係、あるいは数値化・言語化されていない微細な兆候といった文脈は一切反映されていない。AIが提示した複数の選択肢に対して、社内の事情という文脈から補正したり(脱法的な場合もあるが)、前提の妥当性を吟味した上で、どのリスクを取り、どの道を選ぶかを判断し、その結果に対して全責任を負うことが人の重要な役割だ。この不確実性を引き受けるという役割は、どれほど技術が進歩しようとも人にしか担えない。

(3) 既存のデータの組み合わせから外れた例外的な状況において、組織や自分自身がどのような価値観や倫理基準に基づいて動くべきかという規範を示すことも、人に課せられた役割だと言える。統計的に「ええあんばい」とされる平均的な結論が、戦略的・倫理的に常に正しいとは限らない。AIが平均的な解を瞬時に、かつ大量に量産できる時代だからこそ、意識的にその平均から外れ、独自の視点と意志を持って方針を打ち出すことにしか価値は残らないのだ。AI を使いこなして手作業を減らすなんてことは、単に入口の足切りラインを越えたという程度のスキルにすぎない。手抜きのテクニックをいくら収集したところで、本質的な思考力や競争力など身につくはずもなく、むしろ自ら考え、判断を下すというタスクから逃避するための免罪符にしかならない。

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