Scribble at 2026-07-29 21:52:25 Last modified: unmodified

国語辞典を1ページずつ読んで、新しく覚えたい言葉だとか、誤解していた言葉だとか、あるいは用法に注意しておきたい言葉などをメモしている。休みながら続けているので、なかなか進んでいないのだが、興味深いことに気づいた。それは、「え」で始まる言葉が非常に少ないということだ。いや、国語辞典にはそれなりのページが割かれているけれど、そこに収録されている言葉の大半が外来語であることに気づいた。そこで、手元にある『旺文社古語辞典』(第10版、松村・山口・和田/編、2008)で確認すると、「え」で始まる言葉は1,500ページの辞書で10ページていどしか掲載されていない。ということで Gemini に問い質してみると、次のように応答された。

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国語辞典を開いたときに「え」の項目に外来語が集中しているように見えるのは、気のせいではなく日本語(和語)の歴史的な音律のルールが大きく関係しています。大きな理由は以下の3点にまとめられます。

1. 古代日本語(和語)では「え(エ)」で始まる言葉がほとんどなかった:本来の日本語(和語)では、語頭(言葉の頭)に単独の「え(エ)」の音が立つことを避けるという強い音韻上の制約がありました。古代における「え」という音の多くは、単独で発生したものではなく、「あ+い(A+I)」や「い+あ(I+A)」などの母音が融合して後から生まれた変化音でした(例:「あおい(青い)」→「あおえ」などの変化)。そのため、言葉の頭に純粋な「え」が来る単語自体が歴史的に非常に少なかったのです。

2. 漢語(音読み)でも「え」で始まる語は限定的だった:漢字の読み(音読み)においても、「え」で始まるものは「えい(英・永・影など)」「えん(円・遠・塩など)」といった撥音(ん)や引く音(ー)を伴うものにほぼ限られています。辞典の「え」の項目の中で、「え」単音や「え+子音」で始まる日本語や漢語のバリエーションがもともと非常に少なかったため、辞典のページ数や項目数自体が他の五十音に比べて少ない傾向があります。

3. 外来語(主に英語)の「E」や「A」の受け皿になった:一方で、西洋から入ってきた外来語(主に英語)には、頭文字が E や A で始まる単語が大量に存在します。日本語がこれらの外来語を取り入れる際、和語や漢語の「え」のエリアに空白が多かったこと、そして英語の `/e/` や `/ɛ/`、`/æ/` といった音が「え」の表記に割り当てられたことで、和語・漢語の少なさと外来語の多さの対比が際立つ結果となりました。

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確かに、小林好日氏の「五十音圖に於ける『エ』の音價」(in 『国語学の諸問題』, 岩波書店, 1941, p.27-49)という論文にも同じ主旨の指摘がある。これは、捕捉として他の資料を検索していたところ、@yyskodai 氏がブログ記事で紹介されているのを知って、国立国会図書館デジタルライブラリーで公開されている小林氏の原文を参照している。実際、地方には "ye" から始まる言葉遣いが残っているらしく、"e" で始まる語彙に発音が移っていったのは江戸時代以降ではないかという説には、古語辞典の語彙の収録方針に何か偏ったところでもない限りは、古語辞典に収録されている「え」で始まる言葉が極端に少ないという事実は状況証拠になりうる。そして、現代においても同じような傾向があるらしく、辞書のページ数は1,400ページの中で20ページほどに増えているわけだが、その多くが外来語であることを考えると、外来語以外の語彙としては殆ど増えていないと思われる。

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