Scribble at 2026-11-07 08:22:15 Last modified: unmodified
従来の「知能爆発(Intelligence Explosion)」の議論では、人間を超える超知能(ASI)が登場してから急激な進歩が起きると考えられていた。しかし著者は、それほど強力なAIが登場する前から、既存のAIが研究者を支援することでも研究速度が上がり始めていると主張している。GPT系モデルは、コード生成、実験アイデアの提案、デバッグ支援などを行える。AI研究者がこうした作業をLLMに委任することで、生産性が実際に向上しているという観察が紹介されている。もちろん、僕が担当している情報セキュリティでも、攻撃・防御のどちらにおいても劇的な生産性の向上が報告されている。
「人間だけが研究する段階」→「超知能が全て研究する段階」という急激な切り替えが起きるわけではなく、現実には、AIが研究活動の一部を徐々に代替し、人間とAIの協働割合が増えていく形になる可能性が高い。そうなると、AI研究者がAIツールによって効率化され、その結果、より良いAIモデルがより早く開発される。そして、その新しいAIがさらに研究を支援し。この循環によって研究速度が加速する可能性がある。つまり、AIが人間を完全に超えた後に知能爆発が起きるのではなく、現在のAIが研究者を支援することで、すでにAI研究の加速ループが始まっているのではないかということなのだろう。
ただ、たとえば科学哲学という特定の分野で、専門誌に投稿するような面倒臭い手続きの成果だけではなく、個人としての研究者が続々と論説を公開し始めているかと言えば・・・そんなことはない。なぜなら、個人のブログなどに論説を公開したところで業績にはならず、したがって大学でのポジションを確保したり就職する役には立たないからだ。日本の科学哲学プロパーなんて、たいていは哲学する動機も大してなければ哲学的な才能も無い単なる英語と数学の秀才にすぎず、自発的に研究した成果を専門誌に掲載するだけではなく他の機会も見つけて世に問うというほどの意欲や動機なんてないんだよね。大学で教授職を得て、岩波から本を出版して、紫綬褒章でももらってから死ぬのが彼らの人生設計なのだろう。いま述べたことは、はっきり言ってその人物が哲学者であるかどうかとは何の本質的な関係もないことなのだが、もともと哲学するとか世に問うて何かを論じるだけの意欲や動機がないのに大学教員になってしまったような凡人にとっては切実なことなのである。