Scribble at 2024-01-24 20:02:57 Last modified: 2024-02-12 10:14:15
いやね、そのね、もうちょっと手心というかなんというか。マジでシェリング研究したり、ベルグソンがすごいと思ったりして頑張ってる人っているわけでしょ。そういう人のほとんどって、自分が単なる死んだ思想をつつきまわして、それがどう死んだか、あるいは生まれる前からそもそも生きてなかったという話をしているつもりじゃないと思うんですよね。
自分では池田信夫くんのような炎上芸人とは違うと思ってるだろうけど、僕ら哲学者から見れば彼のようなスタンスもリバタリアンの亜流ということだし、酷いことにリバタリアンというのは X でも分かるようにポピュリストと喧嘩してるようでいて、権威とか制度とか伝統とか安全という観念を軽視するという点では殆ど双生児みたいなものだ。
よって、ラヴジョイの著作を専門あるいは厳密に読めるはずの(外国語秀才である)哲学のプロパーから殆ど見向きもされていないという明白な事実を簡単にスルーして、X で自己責任論や数々のヘイトをばらまく連中が手を叩いて喜ぶようなマウンティングをしては、小遣い稼ぎやアクセス稼ぎにいそしむのが習い性となる。あるいは、こうしたポピュリストとリバタリアンの悪魔合体みたいな連中と言えば、哲学叩きや「文系」叩き(でも、信夫くんは経済評論家だし、山形くんもしょせん MIT を出てたって都市計画が専門だよね)という芸風もあって、ラヴジョイのような俺に言わせれば夜郎自大としか思えない三流の思想家を面白がって紹介したりするわけだよ。「ラブジョイ」って、検索してみな。AV女優のページしかヒットしないってば。
僕は権威主義者なので、どれほど政治的な事情があろうと、大勢のプロパーが重視していないなら、それは学ぶべきものがないという証拠だと思う。だって、アメリカの学閥の影響を受けてないフランスやドイツでも、わざわざ翻訳を読む人が殆どいないわけだし。同じく、アイビー・リーグの哲学教授が、暇潰しに(彼らリバタリアンのアイドルである)アイン・ランドの本を何冊か読んだことがあるとしても、彼女の著作をどこかでこっそり文献表に掲載する価値があるとは思っていないだろう。そういう、どうでもいいと思われてる物書きの本を見つけ出しては、ほらみろ現代の学者は偏ってる、何か宇宙の真理を見つけた天才の本をないがしろにしている、などと叫ぶ。そういうのって、プロパーはもとより、僕らのようなアマチュアから見てすら、オンラインによくいるドクター崩れとか、学部すら出ていないくせに学者のような権威だけはほしいという、クズみたいな連中と同じなんだよね。
こういう事例を見ても分かるように、旧黒木掲示板にいた人たちって、彼にしても稲葉なにがしにしても、性根は単純で、人文系の学科、とりわけ哲学を叩いていればいいということでしかなくて、そういう明白な業績ないと誤解されたりメリットがないと誤解されている分野(彼もコンピュータの歴史を解説する本を翻訳できるていどにコンピュータ・サイエンスの知識があるなら、クワイン・マクラスキー法とか聞いたことがあると思うけどねぇ)を、そういう無知無教養な連中のお気に召すように叩いてさえいれば崇高な「理系様」になった気分でいっぱい本を書かせてもらえるという物書きというのは、この国には非常に多い。でも、われわれのような哲学者から見れば(そして出版業界にすらいた僕のような人材から見ればなおさら)簡単な話であって、しょーもない理数系の学位しかもってなくてメーカーとか薬品会社とかに就職し、法学部を出た連中とかに頭を押さえつけられて鬱屈した連中の代弁者にすぎないって気がするね。
確かに、山形くんは翻訳家としては有能だと思う。面白い本を見つけてきて翻訳しているのは事実だ。これまでに彼が翻訳した本を何冊か読んだこともある。でも、それって考えようによっては外国語の文章を読める筈の僕ら自身の怠慢というか、だらしのない事情で、彼らのような人々が何か「知識人」や「文化人」であるかのようになっているだけという気もする。例の「編集工学」おじさんみたいな、ただの乱読家を思想家であるかのように錯覚してる、あたまの弱い出版関係者とかと同じだ。そういうわけで、たとえば、山形くんが双曲割引を扱った本を見つけてきて翻訳したとは言っても、そんなの真面目に心理学やミクロ経済学の(英語で書かれたアメリカの)リソースを追いかけてりゃ、遅かれ早かれ見つけたような本だったかもしれない。それをいちはやく見つけて翻訳したという啓蒙主義的な点での功績は認めるけれど、哲学者がそのていどの「知的密輸」に頼っていてはいけない。それはさしずめ、50年前に吉本隆明氏が日本の研究者に苦言を呈したときから何にも進んでいないってことになる。アマチュアだって、未熟なままでいいなんて言い訳は通用しないだろう(それこそ自己欺瞞というものだ)。山形くんが有能なのは分かった。それはいいけど、MD の方で書いてるように、英語どころか日本語が話せるアメリカ人の犯罪者とか、あるいは端的に英語が話せるというだけの無能なアメリカ人なんていくらでもいるわけで、外国語なり英語が扱えること自体は、いまどき(というか、もともとそうなのだが)何の特別な技能でも才能でもない。