Scribble at 2026-07-25 07:37:47 Last modified: 2026-07-25 07:44:30

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# Nano Banana

「英会話」というものが何かの特別な技能であるかのように印象操作されているのが、この国の実情だと思うんだよね。そういう多くの人がクズみたいなレベルの学校教育だとか、同じようにクズみたいなマス・メディアの報道なり番組によって思い込みに陥っていると思える状況は、英語教育の実務家でなくとも大きな不満や不安を感じる。そういう実情を利用して、姑息な商売をする連中が続々と出てくるからだ。出版社、YouTuber、そしてインチキ講師の類だ。こいつらは、まさしく英語で読み書きしたり会話できるということ以上の学識や業績をなんにも持っていない「凡人」であるにも関わらず、英語を扱えるというだけで他人様に何事かを指南できると思い込んでいる(振りをしている場合もあろう)極めつけのバカどもや詐欺師だ。バカは、英語で喋っていようとバカなことを喋るだけなので(もちろん英語の勉強についても)、耳を傾ける必要はない。

で、すごく簡単なところから取り上げてみると、英会話を学び始めた人が陥る思い込みとして、「自分自身の表現」、つまり何かオリジナルの言い回しを使わないといけないだとか、そういう言い回しが使えるようになるのが英会話の「上達」なのだという錯覚がある。要するに、教科書や英会話のフレーズ集に掲載されている典型的なフレーズを使うと、ネイティブに未熟だとか軽んじられるかもしれないという不安があるらしい。でも、これは大きな誤解である。

初学者が抱くとされる、教科書通りの表現を使うと軽んじられるのではないかという不安は、英語の学習における本質的な目的と、心理的な自己防衛のズレから生じている。(1) 学習者の多くは「定型表現=個性のない未熟な英語」と捉えがちだが、言語学や第二言語習得論(SLA)の観点から見れば、現実は全く逆である。(2) 英語の日常会話やビジネス会話の大部分はチャンク(意味のまとまり)や定型表現(formulaic sequences)の組み合わせで成り立っている。ネイティブ・スピーカー自身も、一から文法を組み立てて話しているわけではなく、定型のフレーズを瞬時に引き出して会話をスムーズに回しているのだ。(3) 十分な分量やバラエティのパターンや文法が身についていない段階で「オリジナリティ」をむやみに求めると、単に自然な英語の文脈から外れた不自然な表現、つまり collocation として不自然な表現を生み出すだけである。

それから、型通りの表現は未熟だと思われるという不安は、多くの場合、聞き手であるネイティブ側の受け止め方を誤解していることから生じていると思う。特に、非母語話者との会話においてネイティブが求めているのは、文学的な表現力や個性的なフレーズではなく、予測可能で理解しやすいクリアなコミュニケーションだ。定番のフレーズを正しく使えている時点で、十分な知性とコミュニケーション能力があると評価されるのであって、我流の言葉遣いを組み立てようとすると、逆に常識としての文法や定型句を分かっていない無知な人だと思われてしまうのだ。

つまり、こういう思い込みの背景には、母語での自分と外国語を話す自分とのギャップに対する恐怖があるのかもしれない。日本語であれば高度な思考やこなれた表現ができるのに、英語で基本的なフレーズを使うことに恥ずかしさや物足りなさを覚えてしまうというわけだ。その結果、「自分らしい特別な表現」を使わなければいけないという不安が起きて、無理に難しい語彙やオリジナルの言い回しにしようとして自滅してしまう。

そして、ここで更に強調しておきたいのは、そういうオリジナリティを求めてしまう人には、母語(僕らの場合は日本語)についての誤解もあるということだ。たとえば、会社へ出勤したときに、僕らは大多数の場合に「おはようございます」などと、ほぼ同じフレーズを何百回も繰り返しているはずだ。毎回言うことが違ったり、あるいは大した理由もなく「やあ、君たちおはよう!」なんていきなり言う人はいない。教科書通りのフレーズでは自分の知性や個性が伝わらないという思い込みは、知性や個性は使う言葉の珍しさやひねりではなく、文脈に合った適切な選択と内容が重要なのだという事実を忘れていることから生じるのだろう。そして、ありふれた会話にすら個性が必要だという思い込みの原因は何なのか。それこそ、未熟な自己承認欲求や自意識でしかあるまい。

何度かご紹介している、All Ears English というポッドキャストの番組で、キャストを勤めているリンジーとミシェルは、もう2,500回を超える膨大な回数のセッションなりエピソードを配信し続けているけれど、やはり会話の最初はたいてい "How are you today?" だ。それでぜんぜん問題ないし、構わないし、いったいそれの何がいけないのかというわけである。なので、英会話の本を使う場合でも、やたらと色々なパターンが掲載されている大部のフレーズ集(それこそ市橋敬三氏の辞典みたいな)を求める人もいるが、ああしたものは研究者向けと言ってよく、基本的な表現を状況に合わせて変えるといった応用のためには、そんな辞典のパターンを暗記するよりも、ただ単に英文法を丁寧に勉強する方が遥かに効果的である。つまり、英会話にとって重要なテキストは、寧ろ英文法の教科書なのだ。

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