Scribble at 2026-07-14 09:34:29 Last modified: 2026-07-14 10:33:22
先日の落書きで、Bun のコードを Rust で書き換えたという話題だが、更に話が展開しているようだ。Hacker News でも、新しくスレッドを起こして上の記事を取り上げているが、既に upvote が1,500を超える大きな話題となっている。
アンドリューの議論は、僕も既に指摘したとおり、これは技術的な理由というよりも Claude の宣伝という理由で開発プラットフォームを Zig から Rust に換えただけのことであって、Zig という処理系に何か重大な問題があるわけでもない。寧ろ問題があるのは、Anthropic は結局のところソフトウェア・エンジニアリングという人類の知見を終わらせるようなことをやっており、現状の生成 AI の夥しいガラクタのようなコードが吐き出されている現状を見ると、これはどう考えてもシステム開発というものにとって自滅的なことをやっている。AGI が達成されたら、AI が自分自身のコードを点検できるというが、そんな魔法は存在しない。プログラムというものは、単にアルゴリズムなりルーチンとして動くというだけでは十分ではなく、他の色々な非機能要件を満たす必要があるし、更には人がシステムに求めている他の色々な(非機能要件としてすら仕様にできない)使い勝手や印象なども満たさなくてはいけない。だが、現状の生成 AI で作れるコードは、そういう要件を全く満たせないし、実のところフロント・エンドのデザインだって殆ど作れていない。Canva を始めとする生成 AI のテンプレ会社が大量に作っている「ページ・デザイン」と称するものの殆どは、実際には人が検査して提供しているのであって、AI が自律的にデザインの良し悪しを判断などしていない(なので、本当のところ歩留まり率がどれくらいなのかは、誰も知らない)。
そして、Hacker News のスレッドでも、同様にして、これは Zig vs. Rust の処理系どうしの論争ではなく、AI 依存の開発プロセスが品質や持続性を満足していないという事実にも関わらず、「ナウいコーディング」や「イケてる開発」を唱道する三流コーダや IT コンサル、あるいはベンチャーの三下プログラマといった Claude 馬鹿が増えており、得てして馬鹿の気軽で大量の投稿がウェブのコンテンツを席巻しやすい(悪貨は良貨をなんとやら)のがソーシャル・メディアの特性であるから、あたかもバイブ・コーディングがトレンドであり、最先端の開発手法であるかのように語られてしまい、メディアもそれに関連する広告収入や書籍の出版やセミナーの開催で儲けるというインセンティブがあるので、煽っているようなところがある。
だが、このような傾向は情報セキュリティ・コーディングや個人情報の保護という僕の別管掌という観点からみても、言えることだ。つまり、生成 AI への依存が過剰になると、攻撃ベクトルも防御ベクトルも殆ど同じになってしまい、同一の地平で時間とお金をいくらかけたかで勝負が決まるという、子供の殴り合いみたいなものになる。だが、真の有能な攻撃者はそんな馬鹿げた競争にだけリソースを費やすわけがないからだ。しかし、AI への依存度が増してハンド・メイドの防御ができるエンジニアが減ると、そういう攻撃者への防御が手薄になる。また、攻撃はともかく防御に高性能な AI が必要になると、これは弊社でも実際にいま起きていることだが、キントーンで事務屋がアプリを開発する・・・なーんてわけにはいかないのであって、やはり専門の運用エンジニアが必要になる。そして、こういうことには常識的な予算感というものがないので、出鱈目な連中が「プロンプト・エンジニア」を名乗って暴利をむさぼったり、IT ゼネコンを脱サラした「SE」とか「PM」などと呼ばれる技術営業風情が、地方公共団体にコンサルとして関わっては出鱈目なことをやっている。