Scribble at 2024-04-04 14:28:15 Last modified: 2024-04-04 14:28:23

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電子書籍が普及してきたら、実はアマゾンの方が不利になるとも考えられる。なぜなら、いまのところアマゾンで洋書を買っている理由として、(1) Amazon Prime だと配送料がゼロになる、(2) 他の輸入洋書サイトに比べて安いという二つの理由があるのだが、物体としての書籍を買わないならアマゾンのアドバンテージにならないからだ。電子書籍だったら、Amazon.co.jp で買おうと紀伊國屋のサイトで買おうと価格は殆ど変わらないし、国内のサイトでなくてもいい。いや、それどころか Springer や Oxford U.P. なら出版社のサイトで買えてしまう。

たとえば、Springer から出ている Charu C. Aggarwal, Linear Algebra and Optimization for Machine Learning (2020) を選ぶと、この電子書籍版は、Springer の版元サイトでは 42.79€(7,038円)となっていて(いまサイトが落ちていて詳しくは分からないのだが)、これをアマゾンで買うと8,086円、Barns and Noble ではセール中なので5,686円($37.49)だが、通常価格でも7,582円($49.99)であるから、実はアマゾンよりも安い。ちなみに紀伊國屋書店オンラインだと、本体価格は8,248円だが消費税を加えて9,000円を超えてしまう。よって、まだ国内の書店サイトは価格という点で海外のサイトに太刀打ちできない。

これらのうち、やはり電子書籍ならどう考えても版元で購入するのがいい。理由は決定的で、アマゾンや Barns and Noble で購入すると端末(ファイル・フォーマット)を強制される上に、倒産したらデータは消失してしまうからだ。よく言われることだが、資産としての書籍を購入したのではなく、彼らが提供する Kindle 形式のファイルへアクセスする権利を買っただけにすぎないということだからである。紀伊國屋の場合も Kinoppy とかいうアプリケーションでしか開けない。これに対して、版元で購入した電子書籍も Adobe eBook Reader という特殊なリーダ(Adobe Reader とは違う)を使うものの、ハードウェアによって開く要件が制約されるわけではないから、色々な端末で読める。ファイルとして自分の資産にできるというのが、他のフォーマットで販売されている電子書籍とは異なる。

そして、版元を利用する他のメリットとして、やはり書籍の一覧をブラウズするのが快適だという点も捨てがたい。出版社ごとにアクセスしなくてはいけないので、自分が知らない出版社から出ている書籍に遭遇しないという機会喪失はあるが、正直なところ科学哲学だろうとシステム開発だろうとラノベだろうと、まともな版元なんて何百もあるわけではない。たとえば、科学哲学の書籍をハワイ大学の出版局で探す人はいないだろうし、システム開発の本を築地出版のサイトで探す人もおらず、ラノベを岩波書店で探す人はいない(いや、ラノベ同然の荒唐無稽な学術書という意味なら、岩波でも数多くあると思うが)。これに対して、ここでもたびたび述べているように、アマゾンで洋書を検索しても、上の画像のようにメモ帳が数多く出てくる。これらを「-」記号でフィルタリングするだけでも面倒だ。

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