2017年01月30日15時39分 に初出の投稿

河本孝之Takayuki Kawamoto

Last modified: 2017-01-30 15:39:55

因果関係について大多数の同意を得る学説を立てることに成功した者はいないと言っても過言ではない。しかし、それを試みてきた人々による学説の発展は、疑いなしに、数多くの豊かな洞察をもたらしてきている。そして、それは単にこの主題についてもともと人々が抱いていた興味からというだけではなく、因果関係が現代の哲学において交わされている他の論争にも関わっているからなのである。因果関係が関わる論争は(少なく見積もっても)、心的な因果関係と心の本質、認識論、知覚、色、行為論、決定理論、意味論、科学的説明の理論、時間の矢の非対称性、それから道徳的・法的な責任を挙げられる。哲学的に言うと、因果関係はあらゆる議論に関わっているのだ。つまり、因果関係の研究 ― 特に、因果関係についての形而上学を哲学として首尾よく説明する見込みの研究 ― は、どの分野においても同じていどに広い関心を集めているのである。

Laurie Ann Paul and Ned Hall, Causation: A User's Manual, Oxford University Press, 2013, p.1.

この一節も、因果関係の哲学というジャンルの概説書ではお馴染みの紹介パターンではある。しかし、これまでの研究者が “none has yet succeeded” であったのは、大多数の研究者たちの同意を得ることだったのか、それとも学説を立てること自体だったのかは、簡単に区別してどちらが正しいかを決めることはできない。とは言え、前者について成功を逃してきたという結果は、ここで詳しくその経緯を考察した結果として、何か哲学として間違った学説だったからこそ多くの研究者の同意を得られなかったのだと言えるかどうかはわからないし、哲学の学説としての欠点という理由であれば、何も人間関係や「政治的」な分析や考察がなくとも、後者について「因果関係についての(大勢から同意を得るという特徴というよりも)妥当な議論」が求められるべき基準から考察する方がよいのだろう。

その他、因果関係の概念が数多くの議論に関わっているという、これもまた非常にありふれた説明についても、多くを述べる必要はないだろう。

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