Scribble at 2024-08-12 08:51:10 Last modified: 2024-08-12 10:44:19

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The 376 Most-Cited Contemporary Authors in the Stanford Encyclopedia of Philosophy

被引用数のランキングをつけているらしい。1位のデイヴィッド・ルウィスについて書かれている "cited in 307 different main entries" という注釈で分かるように(というか、なんで冒頭に単純明快な説明を書かないのか不思議なのだが)、これは SEP 内部だけで解析した被引用数のランキングらしい。そして、僕はこれはあまり「良い統計」だとは思わない。なぜなら、SEP というコンテンツの趣旨から言って、それぞれのエントリーを制作するにあたって、おそらく著者には概括的ないしは一般論を語ろうとするバイアスがかかるからだ。そうすると、もちろん自分自身が評価していようといまいと古典的ないしは標準的に従来の著作物で取り上げられた文献を使わざるをえなくなるため、著者自身の見識から言って評価していない著者の文献が取り上げられることになるからだ。もちろんだが、ルウィスこそがそういう「実は評価に値しないのに被引用数ばかり多い人物」だと言いたいわけではない。

これは、おそらく(文字通り「機械的な」)意味論上の距離という基準だけでデータの統計的なアンサンブルを吐き出しているにすぎない、生成 AI によって出力されるテキストのイデオロギー的な収斂とかエコー・チェインバーと似た効果が認められると思う。ちなみに、僕はいま制作しているテキストのアウトラインに生成 AI を利用しているが、実際のコンテンツになる文章を生成 AI に任せるつもりはないし、生成 AI が列挙するアウトラインを構成ないし目次として採用するつもりもない。現状では、ウェブ・コンテンツの寄せ集めから常識的に言えそうな叩き台を提案してもらうていどであって、プロパーはもちろん、われわれのようなレベルのアマチュアがそのまま採用してものを考えたり書くような水準に達していないし、たぶん現状のウェブ・コンテンツの品質と量から言っても、これから追加されるコンテンツによって AI がどれほど緻密で的確なトレーニングを重ねようと限界があると思う。もっとも、「限界」とは言っても早稲田の博士号を授与されたり、吐き出した文章を出版して長野県に書庫を兼ねた別荘を建てられるくらいの売上が出せる文章になるかもしれないがね。そういうものを喜んで買って読む側にだって、情報や知識の量はどうでもいいとして、現行の AI を上回る見識や知性(それが何を意味しようと)があるかどうか怪しいわけだし。

というわけで、ランキングそのものは実際にご覧いただければ済む話なのでご紹介しない。また、このブログ記事のコメントには、リチャード・ローティやウィルフリッド・セラーズやウィリアム・ブランドンのランクが低いとか、はっきり言って人気投票かなにかと勘違いしてる人物の意見もあるが、そういう意見は阪神の四番打者として掛布が最強だったの田淵だのという議論と同じであって、関大の食堂で喋っていればいいような話でしかない。また、分析哲学や科学哲学という分野の評価基準から言っても、テクニカルな議論での実績ではなく、いわば「思想家」としての評価が先行する(そして、実際に彼らにはルウィスが universals や causation や theoretical terms や conditional probability というテーマにおいて貢献を果たした論説と比べて、ここまで目立つ実績はないであろう)ローティやブランドンらのランクが低いのは当然であろう。

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